芸能

西郷輝彦 弟子入り願った森繁久彌は「しなやかな柳だった」

 17歳で歌手としてデビュー。立て続けにヒット曲に恵まれた西郷輝彦は、その後、舞台やテレビドラマで活躍し、俳優としてもその才能を見せつけた。そんな西郷が「弟子にしてください」と頭を下げるほど影響を受けたのが森繁久彌だったという。映画史・時代劇研究家の春日太一氏の週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』からお届けする。

 * * *
 西郷輝彦は舞台やテレビドラマ、時代劇などで森繁久彌と数多く共演してきた。最初の共演は1979年の舞台『暖簾』だった。

「僕が『どてらい男』の舞台を梅田コマ劇場でやっている時、その次の月が森繁さんの公演で稽古に来てらして。付き人の方が楽屋に来て『遊びにきてほしい』ということでご飯をごちそうになったんですよ。それで『今度、芝居にこい』ということで、名古屋で有島一郎さんとやってらした『曾我廼家五郎八』の芝居を観にいきました。

 最後になって森繁さんが亡くされた相方の役者のことを延々と喋るんですよ。それも、『白鳥の湖』を踊ったりいろんな芸をなさる。観客はゲラゲラ笑っているんですが、緞帳が動き始めた瞬間くらいに『なんで死んだんや!』というセリフを叫ぶんです。

 それで観客は一気に泣いて、そのままストンと緞帳が降りる。やられましたね。『俺は今まで何を偉そうに役者なんてやってきたんだ』と思って。そのまますぐ楽屋に行って、『お願いです。弟子にしてください』と言いました。

 森繁さんは『弟子はとらない。でも、来たいんだったら遊びにおいで。うちは森繁商店だから、その軒先に君の店を出したらいい。うちの店は客をいっぱい持っているから、お客をみんな持っていっていいよ』とおっしゃるんです。つまり、『一緒に舞台をやろう』ということです。それで『暖簾』という舞台で森繁さんの若い頃、つまり主人公で出させていただきました」

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
焼酎とウイスキーはロックかストレートのみで飲むスタイル
《松本の不動産王として悠々自適》「銃弾5発を浴びて生還」テコンドー協会“最強のボス”金原昇氏が語る壮絶半生と知られざる教育者の素顔
NEWSポストセブン
沖縄県那覇市の「未成年バー」で
《震える手に泳ぐ視線…未成年衝撃画像》ゾンビタバコ、大麻、コカインが蔓延する「未成年バー」の実態とは 少年は「あれはヤバい。吸ったら終わり」と証言
NEWSポストセブン
米ルイジアナ州で12歳の少年がワニに襲われ死亡した事件が起きた(Facebook /ワニの写真はサンプルです)
《米・12歳少年がワニに襲われ死亡》発見時に「ワニが少年を隠そうとしていた」…背景には4児ママによる“悪辣な虐待”「生後3か月に暴行して脳に損傷」「新生児からコカイン反応」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン
“1日で100人と関係を持つ”動画で物議を醸したイギリス出身の女性インフルエンサー、リリー・フィリップス(インスタグラムより)
《“1日で100人と関係を持つ”で物議》イギリス・金髪ロングの美人インフルエンサー(24)を襲った危険なトラブル 父親は「育て方を間違えたんじゃ…」と後悔
NEWSポストセブン
自宅への家宅捜索が報じられた米倉(時事通信)
米倉涼子“ガサ入れ報道”の背景に「麻薬取締部の長く続く捜査」 社会部記者は「米倉さんはマトリからの調べに誠実に対応している」