ビジネス

10時間充電で60km走行可能なオート三輪 販売前から注文殺到

充電式のオート三輪を開発した日本エレクトライクの松波社長

 戦後の復興期に流行したオート三輪が電気駆動に姿を変え、平成の街を疾走する──。神奈川県川崎市のベンチャー企業「日本エレクトライク」は今年6月、国土交通省の型式認定を取得。国内では19年ぶり16番目となる自動車メーカーの誕生である。

「学生の頃、『ダイハツ・ミゼット』に夢中になりました。大人になっても小回りが利いて便利な三輪自動車にどうしてもまた乗りたかった。その夢を自分の手で実現できた。うちの会社はオート三輪で勝負します」

 工場で完成した『エレクトライク』を前に晴れやかな笑顔を見せる松波登社長(66)。だが、夢の実現までには時間がかかった。父親の機器メーカーを継いだ松波氏だったが、40歳の時に仕事で訪れたタイで、『ミゼット』にそっくりなオート三輪が街中を走っている光景に出会う。

 その瞬間、懐かしい昔の記憶が甦り、オート三輪を輸入する会社の設立を決意。しかし、いざ輸入してみると品質の悪さから商売にならないと判断し、オート三輪事業からは一度撤退する。

 それでも夢を諦められない松波氏に転機が訪れたのは2005年。母校である東海大学に提案した電気駆動のオート三輪開発のプランが認められ、産学連携のプロジェクトが始動する。そしてカーブ時の安定性などを補い、家庭用コンセントから充電できる全く新しい平成のオート三輪が完成した。全長2.5m、幅1.3mで、10時間の充電で約60km走行可能だ(最高時速は50km)。

 普通免許で運転ができ、シートベルト、ヘルメット着用の義務はない。販売価格は100万~130万円で、安定した走りと小回りの利くボディ、荷物も多く載せられるとあって、8月の販売開始前から注文・問い合わせが殺到する。

「従業員は10名で手作業も多いため、1日に1台ほどしか製造できず、すべての注文に応えられていません。私の夢だった新しいオート三輪はCO2を排出しません。日本はもちろん、周辺の国にも広く普及させ、アジアの空をきれいにしたいですね」(松波社長)

 すでにJリーグ「川崎フロンターレ」は練習場で使用している。水やボールなどを載せ、選手が負傷したときは担架の役割も担っているという。

撮影■渡辺利博

※週刊ポスト2015年9月4日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン