ライフ

慢性疾患の突発性肺線維症に7年ぶりに「抗線維化薬」が承認

 50歳以上の喫煙男性が特発性肺線維症の主な患者だ。7種類ある特発性間質性肺炎の一つで、最も発症頻度が高い。肺の奥の肺胞(はいほう=肺を構成する軟らかい袋)の薄い壁や小葉間隔壁に沿った部位に傷ができ、その修復のために壁が厚く線維化する。傷ができる原因は不明で、病気の進行にともない肺が硬く縮み、ハチの巣のように穴が空いた蜂巣肺といわれる肺になる。

 このため、酸素の取り込み量が減り、肺活量が低下することで坂道や階段昇降、入浴や排便など、日常動作で呼吸困難を感じるようになる。さらに、季節に関係なく空咳が出るようになることもある。東邦大学医療センター大森病院呼吸器内科の本間栄教授に話を聞いた。

「この病気は、タバコと老化が危険因子ですが、それ以外にオキシダントなどの大気汚染や胃液が逆流し、肺に入る逆流性食道炎なども危険因子として挙げられます。予後が悪く、肺がんの合併率が高いのも問題です。最近はタバコ病といわれる一大疾患であるCOPDを合併した、気腫合併肺線維症の方も見られます。特発性肺線維症は、予後不良な国の指定難病の一つです」

 特発性肺線維症は、長い年月をかけて進行することが多いので、自覚症状が出るころには、病状が進行している場合も多い。また、風邪を引いた数日後に、急激に呼吸困難になる急性増悪が起こることがあり、注意が必要だ。生存期間の中央値は、診断後2~3年と報告されている。

 治療は息切れなどの自覚症状がほとんどない場合、喫煙者なら、まずは禁煙する。確立した治療法はないが胸部X線写真撮影で病状の経過観察を行ない、年齢、進行度などに応じて抗酸化薬のN-アセチルシステイン(ムコフィリン)の吸入や、2008年に販売認可された抗線維化薬のピルフェニドン(ピレスパ)等の投与を考慮する。

 今年、新たに抗線維化薬として分子標的薬ニンテダニブ(オフェブ)が国内承認された。これは血小板由来増殖因子(PDGF)受容体、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)受容体、線維芽細胞成長因子(FGF)受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害し、線維化の進行を抑制する薬だ。臨床試験では、年間の肺活量減少を約50%抑制する効果が得られた。急性増悪の発現頻度を減らす効果も報告されている。

「ピルフェニドンとニンテダニブは、ともに抗線維化薬ですが両者とも主に消化器系の副作用が高率に認められます。副作用の種類、程度は患者さんによって、それぞれ特徴があるので、副作用対策を含めたオーダーメイド治療を施していくことが重要だと思います」(本間教授)

 新たな抗線維化薬の登場で、治療の選択肢が拡がることが予想される。今後はムコフィリンなどの併用療法によって、予後が改善されていくことが期待されている。

■取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2015年9月4日号

関連キーワード

トピックス

交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
身長145cmと小柄ながら圧倒的な存在感を放つ岸みゆ
【身長145cmのグラビアスター】#ババババンビ・岸みゆ「白黒プレゼントページでデビュー」から「ファースト写真集重版」までの成功物語
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「部屋に盗聴器が仕掛けられ、いつでも悪口が聞こえてくる……」被告が語っていた事件前の“妄想”と父親の“悔恨”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン