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戦後初の長者番付 戦後のドサクサで儲けた成金が上位に多い

 長者番付は時代を映す鏡と言われる。今年は戦後70年という節目の年だが、戦後の混乱期にはどんな人物が長者番付に名を連ねていたのか?

 1947年度、記念すべき“初代王者”となったのは、織物販売業で財を成した加藤尚という人物だった(申告所得額=3500万円。当時の国家公務員の初任給は4223円~1万680円)。加藤は後に闇市での取引が不当利得と指摘され逮捕された(※後に無罪)。この年にランキング入りした長者は戦後のドサクサで“一発当てた”新興成金が多く、その他にも後に贈収賄、脱税などの疑いに問われた長者もいた。

 翌1948年度の1位は貸金業の森脇将光(申告所得額=9000万円)。森脇は半年間で1億1300万円を貸し付け、9000万円もの利子を計上してトップになった。当時の物価は現在の100分の1と考えられるので、利子だけで約90億円。さすがに貸し金が焦げ付いて回収できず、森脇は1950年には滞納額1億円となり、滞納ランキングの1位にもなった。『日本の長者番付』(平凡社新書)の著者で、企業系列の研究者でもある菊地浩之氏がいう。

「森脇は三菱銀行を巻き込んだ巨額詐欺事件である『吹原産業事件』(1965年に表面化)など、様々な経済事件に関わったいわくつきの人物です。金貸しといっても現代のサラ金とは違い、当時は一流企業が彼を頼るほどの大物金融業者でもあった。創業したばかりのホンダが彼を訪ねたが、お金を貸してもらえなかったという逸話もある」

 1950年6月には朝鮮戦争が勃発。日本は連合国軍の補給基地となり、軍需物資などの発注が舞い込み、工場はフル回転した。いわゆる朝鮮特需だ。その恩恵を受けた炭鉱業が、1950年度、1951年度の番付に名を連ねる。とくに1952年度はベスト10のうち9人を炭鉱業者が占めた。

(文中敬称略)

※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号

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