総務省に問うと、「地デジ対策費などは周波数の逼迫の解消に繋がるものであり(携帯ユーザーも含めた)全ての電波利用者に恩恵がある」(電波利用料企画室)と回答した。
確かに恩恵はあるのかもしれないが、テレビ局からもっと電波利用料を徴収すれば、携帯会社、つまりは我々の負担が減るのは明らかだ。電波行政に詳しい鬼木甫・大阪大学名誉教授(経済学)が指摘する。
「もうひとつ、携帯電話の料金が安くならない理由として、日本には主な携帯会社が3社しかない点が挙げられます。業界が寡占化し、暗黙の協調もあるので値下げなどの競争が起こらない。
テレビ局が使っていないのに占有している放送電波を全て電波オークションにかければ、新規参入が可能になり、長期的には携帯料金の値下げも見込める。オークションによる国庫収入は最大で約2兆円と試算されていますが、先進国で電波オークションを実施していないのは日本だけです」
民主党政権時、電波の周波数帯の利用権を競争入札にかける「電波オークション」導入に向けた電波法改正案が国会に提出されたが、安倍政権に交代した途端、なぜか撤回された。
公共の電波を独占しながら利用料はタダ同然。おまけに電波にタダ乗りして深夜の通販番組で関連会社が販売する商品を宣伝し放題。さらには自社中継局の整備費用の一部まで携帯ユーザーに付け回す──。
※週刊ポスト2015年10月16・23日号