芸能

黒木メイサ 『デザイナーベイビー』妊婦刑事役で存在感示す

 今クールのドラマ、どれを見ればよいか迷っている人も多いだろう。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が今回フォーカスするのは「医療系」の2作品だ。

 * * *
 秋ドラマの先陣を切って9月22日にスタートした『デザイナーベイビー -速水刑事、産休前の難事件-』(NHK火曜午後10時)。一部メディアが「低視聴率で爆死か!?」などと酷評しているが、いやいやどうしてスリリング。数字がすべてを語っているわけではない。

 ちなみに「デザイナーベビー」とは、遺伝子操作等によって親の望む能力を与えられた子のことを言う。物語は新生児の誘拐事件に始まり、生殖医療や遺伝子操作の闇へ。妊娠8ヶ月の女性刑事が、複雑にからまりあった謎に立ち向かう--と聞くと、エンターテインメント系推理ドラマかと思う人もいるはず。

 しかしこのドラマ、「筋を追いかけて謎を解く」だけに留まってはいない。人間の業の深さ、命を操作する倫理性--つまり、答の出しようがない深淵な問いかけが浮き上がってくる。だから、目が離せない。

「産みたい人、産めない人、産んでも後悔する人。今の女の人たちは十人十色、それぞれが悩みを抱えている。女の生き方を考えさせてしまう迫力があって、ドラマを見るたびにズシンとくる」という女性視聴者の感想。

「目を背けてはならないテーマを扱っているけれど、自分にとって辛すぎたら見るのをやめるかも」という、ギリギリの声も。

 妊娠・出産。たしかに、これまでは神の領域だった。人の意志ではどうしようもなかった領域が今、技術の飛躍的進歩によって次々に操作可能になっている。そうなればなるほど、新たな苦悩もまた生まれてくるのだ。

 ドラマの構造は多少複雑だが、刑事役・速水を演じる黒木メイサが独特の存在感を放っている。「頭はキレるが、体は重い」という大きなお腹の妊婦の刑事として、産婦人科に潜入捜査。

「妊娠出産を経験したからこそお腹が大きかった時の感覚を体が覚えていて、自然に妊婦を演じることができている」と本人も語っていたように、彼女の実人生が、このドラマの中でプラスに作用しているから面白い。

 お腹のせいで足をおっぴろげて座り、ふっと腹に手を添えたり。刑事としての切れ味と、丸みを帯びたお腹でどこかほわんとした妊婦。まったく違う要素が、奇妙に溶け合った人物がいる。そう、『ルパン3世』の峰不二子のクールビューティと、赤西仁とできちゃった結婚で母となった実在の人物とが、見事に「融合した」役者ぶりなのだ。

「夫が放蕩して稼いでこないから、黒木メイサが頑張らなければならないのよね」と、芸能マスコミの文脈さながら同情ともつかぬ声援を寄せる視聴者も。それだけ見ているこのドラマが人を巻き込んでいる証だろう。

 正面から役作りに体当たりする黒木メイサに、これまでの「スレンダー美人」という型を抜け出て、役者として一歩踏みだそうという気迫を感じる。

 この『デザイナーベイビー』が、「少子化」という社会問題に目を向けたドラマだとすれば、その言葉と常にセットで語られるもう一つの問題、「高齢化」の方はどうか?

関連記事

トピックス

詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
【伊東市・田久保市長が学歴詐称疑惑に “抗戦のかまえ” 】〈お遊びで卒業証書を作ってやった〉新たな告発を受け「除籍に関する事項を正式に調べる」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者が逮捕された
《不動産投資会社レーサム元会長・注目の裁判始まる》違法薬物使用は「大きなストレスで…」と反省も女性に対する不同意性交致傷容疑は「やっていない」
NEWSポストセブン
女優・福田沙紀さんにデビューから現在のワークスタイルについてインタビュー
《いじめっ子役演じてブログに“私”を責める書き込み》女優・福田沙紀が明かしたトラウマ、誹謗中傷に強がった過去も「16歳の私は受け止められなかった」
NEWSポストセブン
告示日前、安野貴博氏(左)と峰島侑也氏(右)が新宿駅前で実施した街頭演説(2025年6月写真撮影:小川裕夫)
《たった一言で会場の空気を一変》「チームみらい」の躍進を支えた安野貴博氏の妻 演説会では会場後方から急にマイクを握り「チームみらいの欠点は…」
NEWSポストセブン
中国の人気芸能人、張芸洋被告の死刑が執行された(weibo/baidu)
《中国の人気芸能人(34)の死刑が執行されていた》16歳の恋人を殺害…7か月後に死刑が判明するも出演映画が公開されていた 「ダブルスタンダードでは?」の声も
NEWSポストセブン
13日目に会場を訪れた大村さん
名古屋場所の溜席に93歳、大村崑さんが再び 大の里の苦戦に「気の毒なのは懸賞金の数」と目の前の光景を語る 土俵下まで突き飛ばされた新横綱がすぐ側に迫る一幕も
NEWSポストセブン
学歴を偽った疑いがあると指摘されていた静岡県伊東市の田久保真紀市長(右・時事通信フォト)
「言いふらしている方は1人、見当がついています」田久保真紀氏が語った証書問題「チラ見せとは思わない」 再選挙にも意欲《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏、夫の音楽家・塩入俊哉氏(時事通信フォト、YouTubeより)
「結婚前から領収書に同じマンション名が…」「今でいう匂わせ」参政党・さや氏と年上音楽家夫の“蜜月”と “熱烈プロデュース”《地元ライブハウス関係者が証言》
NEWSポストセブン
学歴を偽った疑いがあると指摘されていた静岡県伊東市の田久保真紀市長(共同通信/HPより)
《伊東市・田久保市長が独占告白1時間》「金庫で厳重保管。記録も写メもない」「ただのゴシップネタ」本人が語る“卒業証書”提出拒否の理由
NEWSポストセブン
7月6~13日にモンゴルを訪問された天皇皇后両陛下(時事通信フォト)
《国会議員がそこに立っちゃダメだろ》天皇皇后両陛下「モンゴルご訪問」渦中に河野太郎氏があり得ない行動を連発 雅子さまに向けてフラッシュライトも
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏、経世論研究所の三橋貴明所長(時事通信フォト)
参政党・さや氏が“メガネ”でアピールする経済評論家への“信頼”「さやさんは見目麗しいけど、頭の中が『三橋貴明』だからね!」《三橋氏は抗議デモ女性に体当たりも》
NEWSポストセブン
かりゆしウェアをお召しになる愛子さま(2025年7月、栃木県・那須郡。撮影/JMPA) 
《那須ご静養で再び》愛子さま、ブルーのかりゆしワンピースで見せた透明感 沖縄でお召しになった時との共通点 
NEWSポストセブン