10月10日にスタートした『破裂』(NHK土曜午後10時)。エリート心臓外科医・香村鷹一郎(椎名桔平)は冷徹な野心家であり、推進する治療法は画期的。老化した心臓を若返らせるのだから。しかし、そこに大きなリスクも潜む。
最初の治験者になったのは、香村を捨てた実父・国民的俳優・倉木蓮太郎(仲代達矢)だった……。病床の老人を演じる仲代の姿が、凄まじい。ヨロヨロと歩きながら「生」に妄執する姿が真に迫る。一方で、「老人にはピンピン生きてポックリ死んでもらいましょう」と毒を吐く官僚・佐久間を滝藤賢一が怪演している。無名塾主宰者の仲代と、塾卒業生の滝藤。師弟間でさぞかし見えない火花も散っているだろう。
そう想像させられてしまうほど緊迫感溢れる画面、スピーディーな展開、キレのある演技、力量を見せつける役者たち。文句の無い配置。
2つのドラマが問いかけてくるもの。出産をめぐるシビアな状況と、老いに向き合う社会のあり方。生殖と老化をめぐる医療産業の激烈な競争。奇しくも共通点があった。2作とも現役医師が著者の小説が下敷き。つまり、医療現場からの切実な問題提起なのだ。
思い通りに産めば、幸せか。長生きすれば、幸せなのか。
即座に「うん」とは言えないもどかしさ。医療が必然的に抱える矛盾へ鋭く斬り込んでいく物語。生々しい社会問題の中に強烈な「ドラマツルギー」があることを、現在進行形の2つのドラマが教えてくれている。