ビジネス

若者の海外勤務離れ 語学力不足を理由に避けるのは本末転倒

 新入社員が海外勤務を忌避する傾向があることが、大学の調査でわかった。海外勤務はそんなにつまらないものだろうか。フリーライターの神田憲行氏が考える。

 * * *
 10月26日の日経新聞に気になる記事を見つけた。産業能率大学が実施した「第6回新入社員のグローバル意識調査」についてのものだ。この調査は同大学が3年に一度、インターネットを通じて新卒採用された18歳から26歳までを対象に、海外で働くことについての意識をアンケートしている。

 詳しいデータは同大学のホームページに掲載されているので興味のある人は見て欲しいが、そのなかの「注目データ」のひとつとして、こんなのが上がっていた。

・海外で働きたいとは思わない……63.7%

 これは2001年からの同調査で過去最高という。

 その昔は「3K職場」というのが嫌われた。「キツイ・危険・汚い」をローマ字表記したときの頭文字だ。それから逆に「新3K職場」つまり「企画・広報・国際」がもてはやされた。かつて若者の憧れの職場だった「海外勤務」がこれほど人気が無くなったことに驚く。

 この調査結果を海外で働くビジネスマンはどうみるのか。私の友人で海外駐在員のA氏はこの調査を見て、

「海外勤務したくない、というのはうちの会社でも増えていますね」

 と指摘した。彼は駐在員歴が20年以上、グローバル展開する日系企業に勤めている。

「うちの会社を志望する理由は海外で働きたいから、というのが昔からの定番だったのですが、今はもうそれが薄れています。うちの会社ですらそうなんだから、一般的に若い人の指向が海外に向いていないのはわかります」

 その上でA氏がクビをひねったのが、「海外で働きたくない理由」だった。調査のトップになったのが、

「自分の語学力に自信が無いから」……65.6%

「ちょっと他力本願みたいな印象があります。語学は学問ではなくてスキルなので、これを学校教育で身につけられると思っている時点で違和感があります。よく女性の方が語学力が高いという評価を聞きますが、これは語学力ではなく、それ以前の心構えが違うからだと思います。

 女性の方が好奇心や冒険心があり、それを達成するスキルとして語学を習得することに熱心なんですよ。それがたとえ『白人の彼氏が欲しい』というのでも、スキル習得の面からは立派な目標です。語学は飛び込んでいって実地で鍛える。それを学校で教えてもらえると思っている時点で心構えが変だと思います」

 一方で、学校での英語教育に疑問を投げかける同調査結果にも「違和感がある」という。

 学校での英語教育の能力向上について

・聞く「全く役に立たなかった」+「ほとんど役に立たなかった」……52.4%

・話す「全く役に立たなかった」+「ほとんど役に立たなかった」……64.1%

 A氏は、

「さっきの話とは逆説的に聞こえるかも知れませんが、私の場合、学校での英語の勉強、とくに受験勉強で行った系統だった文法の勉強が現在の英語力の基礎になっています」

 という。ちなみに今のA氏の社内公用語はほぼ英語だ。日本人同士のメールのやりとりも現地スタッフが閲覧する必要があるので英語で書くし、会議も英語で行われる。

「スキルとしての英語を筋肉と考えると、学校で勉強する英語は骨格のようなものなんです。文法が正しい英語を駆使できることで、より高度な英語環境や文献に対処できるようになる。仕事で英語を使う立場になると、明らかに学校教育で培った骨格が役に立っていることを再認識させられましたよ。文法という視点での比較では日本人の英語レベルは世界でも高い方だと思います」

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン