3人の老人の不審死が明らかになった川崎の入居者転落死事件。問題の老人ホームは今も営業を続け、2か月が経っても事件の真相解明には至っていない。入居老人の不審死や虐待などについての報道が目立つようになった昨今だが、その裏には介護現場の過酷な労働があるという。昼夜を問わない激務、低賃金、離職者も多いなどの問題が取り沙汰されている。
そんな中で、職場環境を目覚ましく変革した介護現場がある。社会福祉法人 合掌苑(東京都町田市)だ。離職率が高いこの業界で、3年間、離職者(1年以内)ゼロ。それは、2012年から職員の採用方法を大幅に見直したことにある。同苑採用担当・加藤洋子さんが語る。
「2009年の年間離職者は10%を超えていました。サービスの品質向上のためには、長く働いているスタッフが多いことが重要なポイントですし、人が足りなくなると“誰でもいいから採用しなきゃ!”と誤った判断をしてしまうことがある。
まず見直したのが、採用のプロセスです。合掌苑の理念に共感し『ここで働きたい』という気持ちの高い人材を採用するプロセスを作りました。面接をして、通過した人には4日間のインターンシップをしてもらいます。身体の介助も含めて、現場をしっかり見ていただきます。その後、グループワークや面接を繰り返し、本当にここで仕事がしたいかどうか、確認します」
以前は学歴や専門的な知識を重要視し、採用していたが、そうした意識も変え、人間性に着目している。働き始めてからの環境改善にも力を入れた。
「日勤、夜勤と勤務時間が不規則なのは、スタッフにとって負担になる。そこで、2011年から夜勤専従スタッフを確保するようにしました。また、10日~2週間の連続休暇も取得できるようにしています。身心共に健康な状態でいることが、サービスの質の向上や安定、入居者様にとって安心した生活につながると考えています」(お客様相談室マネジャー・神尾昌志さん)
※女性セブン2015年11月19日号