ソニーの画像センサーはアップルのiPhoneなどで重宝され、ニーズが高い。画像センサー事業は工場をフル回転しても生産が追いつかない花形事業で、大分工場の買収によってさらなる収益の増加が見込まれる。一方で東芝の新会社の見通しは暗い。
「大分工場と岩手東芝エレクトロニクスは赤字が続いている。そんな2拠点が合体しても、長くはもたないのではないか」(前出・50代中堅幹部)
こうした見通しが職場の雰囲気に微妙な影を落とす。大分工場に勤務する別の50代社員はいう。
「担当していた業務で行き先はほぼ決まってしまう。あえて口には出さないが、残留組の中に“ソニーに行きたい”と思っている社員は多いはず」
さらに、これからの仕事内容にも違いが出そうだ。ソニー転籍組は社名こそ変わるが生産部門が丸ごと移行するため、作業内容もこれまでと大きくは変わらない。一方、現場で働く20代の残留組社員はこう嘆く。
「一方の新会社は市場拡大が見込まれる自動車向け半導体の生産などに注力する方針と報じられています。今後はこれまでと違うラインの作業も求められると思う。仕事のストレスが増えそうです」(東芝広報室は残留社員の待遇や業務内容がどうなるかについて明らかにしなかった)
大分工場のベテラン社員はこんな心配を打ち明ける。
「ウチは共働きが多いから、夫婦で別々の会社になる可能性もある」
こうした東芝社員の憂いは現実となるのか。買収先のソニー広報部はこう話す。
「東芝さんから受け入れる1100人の内訳がどうなるか当社にはわかりませんが、給与はソニーの基本的な体系に合わせることになります。大分の工場形態は何も決まっていませんが、工場内に看板くらいは設置するでしょうね」
※週刊ポスト2015年11月20日号