このドラマを見ていて、40年前のアメリカ映画『ソイレント・グリーン』を思い出した人は、私だけではないはず。この古典的名作は、資源が枯渇し食料不足の未来社会で60歳以上は安楽死へと誘導され、遺体は食料に加工されていく、という実にブラックなSF映画。それが美しい田園の映像とベートーヴェンの「田園」の響きとともに描き出される。荒唐無稽なフィクションと一笑に付すことのできない、奇妙な真実味を漂わせて。

『破裂』も、どこか共通する魅力がある。膨らむ医療費圧縮のため国策として大量の安楽死を行う。そんなエグい絵空事が、しかし妙なリアリティを残す。

 いったい私自身の老後はどうなのか? ピンピンコロリは理想か? ドラマを見終わった後、ふと現実に戻って考えさせられてしまう。

 テレビ界で「社会派」という言葉はもはや死語に近くなったけれど、これはまさしく人間と社会をえぐり出す「社会派ドラマ」。しかも、従来の「社会派」にありがちだった生真面目な告発調一辺倒では「ない」あたり、ブラックな笑いも伴って深みと複雑さ奥行きが生まれている。

 今や、海外のドラマ界を見ると、巨匠映画監督たちが次々に参画している。アクションに偏りがちの映画作りと違い、「人間をじっくり深く描き出す手法」としてむしろドラマシリーズがむいているからだ、とか。

 いよいよテレビドラマが、「文化・芸術表現」として映画と肩を並べる時代。日本にもその兆しが見えてきたのかもしれない。『破裂』のような、人間に肉薄する優れた娯楽作品が今後も次々に生まれてきて欲しい。

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