国内

高齢者ドライバー加害者親族 認知症検査は机上の空論と語る

 昨今、高齢者による運転事故報道が相次いでいる。そのうちの一つが、今年10月28日に宮崎県で73歳の男が運転する車が歩道を暴走し、6人が死傷した件だ。そして、このケースとは別だが、ある高齢者ドライバーによる事故の加害者の親族である遠藤真由子さん(仮名・50代)は苦しい胸のうちを明かした。

 事故後、父親に認知症の傾向があったと報じられ、自宅には「なぜ、認知症なのに車を運転させたのか」という抗議の電話や手紙が殺到した。家族は誹謗中傷にさらされ、事故の他にも心に大きな傷を負った。

 遠藤さんが「相手のかたが大事にいたらなかったのが救いですが…」と声を絞り出す。

「私たちが認識している以上の速さで、父の認知症は進行したようです。私たちが認知症と向き合う速さ以上に症状が進んでしまって…いや、もしかしたら父は自分の症状がわかっていたのかもしれませんね…。どうして私たちが気づいてあげられなかったのか、悔やんでも悔やみきれません。

 こうなって改めて思うのは、3年に1度の免許更新時の認知症の検査の実施は、机上の空論でしかないということ。こうした事故は防げないと思いますし、私たちみたいな家族は増えていくと思います」

 別の事故の当事者も、高齢者が免許を返納する難しさを実感している。

「高齢者が免許を返納するとタクシーの割引を受けたり、レストランも割引してくれます。スーパーでの買い物を配送してくれるサービスもある。でも高齢者は返納しない。それは特に地方の高齢者にとって、車は生活に欠かせない交通手段であり、人が人らしく生きていくための手段だからなんです。

 親にとって車は、病院へ行ったり、仲間と会ったり、社会とつながり、社会の一員であるための重要な手段。それが人らしく生きることにつながる。高齢者が免許を返納しないのはそういうことなんです」

 また鈴木陽さん(仮名・50代)は親族が起こした事故を振り返ってこう嘆いた。

「私は彼に免許の返納を何度か提案しました。でもそれは彼のプライドが許さなかったのかもしれません。自分より上の年齢の人が運転しているのに自分だけ免許を返納するなんて…って。事故後わかったことですが、彼の認知症は、私たちが認識している以上に進んでいました。彼もそれはわかっていて、私たちに言わなかった…」

※女性セブン2015年12月10日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

「父としての自覚」が芽生え始めた小室さん
「よろしかったらお名刺を…!」“1億円新居”ローン返済中の小室圭さん、晩餐会で精力的に振る舞った理由【眞子さんに見せるパパの背中】
NEWSポストセブン
関屋警部補を演じた原田大二郎(撮影/中庭愉生)
【放送50年特別インタビュー】原田大二郎が振り返る『Gメン\\\'75』の思い出、今だから話せる「関屋警部補が殉職した理由」 降板後も続いた丹波哲郎との良好な関係
週刊ポスト
多忙なスケジュールのブラジル公式訪問を終えられた佳子さま(時事通信フォト)
《体育会系の佳子さま》体調優れず予定取り止めも…ブラジル過酷日程を完遂した体力づくり「小中高とフィギュアスケート」「赤坂御用地でジョギング」
NEWSポストセブン
麻薬密売容疑でマグダレナ・サドロ被告(30)が逮捕された(「ラブ・アイランド」HPより)
ドバイ拠点・麻薬カルテルの美しすぎるブレイン“バービー”に有罪判決、総額103億円のコカイン密売事件「マトリックス作戦」の攻防《英国史上最大の麻薬事件》
NEWSポストセブン
東京都議選の開票を見守る自民党の木原誠二選対委員長(左)と井上信治・東京都連会長=22日夜、東京・永田町の同党本部(時事通信フォト)
《都議選で歴史的大敗》今や自民党は保守じゃない、参院選に向けてウリは2万円給付だけか 支持層から「時代について行けない集団」「消費期限切れ」「金払って党員になっても意味ない」の声
NEWSポストセブン
アナウンサーのオンカジ疑惑を早めに公表したフジテレビ(イメージ)
《オンカジの”儲からない”実態》逮捕されたフジテレビPは2400万円のマイナス、280億円賭けた「バカラのカリスマ」も数千万円のマイナス 勝てない前提のイカサマか
NEWSポストセブン
広島県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年6月、広島県。撮影/JMPA)
皇后雅子さま、広島ご訪問で見せたグレーのセットアップ 31年前の装いと共通する「祈りの品格」 
NEWSポストセブン
無期限の活動休止を発表した国分太一(50)。地元でもショックの声が──
《地元にも波紋》「デビュー前はそこの公園で不良仲間とよくだべってたよ」国分太一の知られざる “ヤンチャなTOKIO前夜” 同級生も落胆「アイツだけは不祥事起こさないと…」 【無期限活動停止を発表】
NEWSポストセブン
出廷した水原被告(右は妻とともに住んでいたニューポートビーチの自宅)
《水原一平がついに収監》最愛の妻・Aさんが姿を消した…「両親を亡くし、家族は一平さんだけ」刑務所行きの夫を待ち受ける「囚人同士の性的嫌がらせ」
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一(右/時事通信フォトより)
《あだ名はジャニーズの風紀委員》無期限活動休止・国分太一の“イジリ系素顔”「しっかりしている分、怒ると“ネチネチ系”で…」 “セクハラに該当”との情報も
NEWSポストセブン
夫・井上康生の不倫報道から2年(左・HPより)
《柔道・井上康生の黒帯バスローブ不倫報道から2年》妻・東原亜希の選択した沈黙の「返し技」、夫は国際柔道連盟の新理事に就任の大出世
NEWSポストセブン
新潟で農業を学ことを宣言したローラ
《現地徹底取材》本名「佐藤えり」公開のローラが始めたニッポンの農業への“本気度”「黒のショートパンツをはいて、すごくスタイルが良くて」目撃した女性が証言
NEWSポストセブン