その好例が福岡の格安タクシー会社「BLUE ZOO」(パンダタクシー)だ。2007年の営業開始以来、「初乗り850mで300円」という超低価格を続けるパンダタクシーは長距離でも5000円を超えると加算額が半額になる破格のサービスが人気だ。
「創業以来、2000円台より300円のお客さまを大事にする経営理念で営業しており、老若男女問わず幅広い層に利用してもらっています。博多の中心地・天神周辺で短距離の移動をするお客様を中心に支持されています」(BLUE ZOO担当者)
「短い距離こそ大切に」という経営努力で利用客を増やしたパンダタクシーだが、2014年4月、「下限割れ運賃」の不認可をタテに九州運輸局が横槍を入れた。国の定めた運賃額を下回る料金で営業しているとして、パンダタクシーなど2社に運賃是正勧告を出したのだ。近畿運輸局も23社に同様の勧告をしている。
その後もパンダタクシーらが国に対して運賃変更命令の差し止めを求めるなど、国と民間会社の係争が続いている。この間、逆風に見舞われた格安タクシーの車両数は激減し、利用者にとっても不利益となった。
ところが、ここに来て画期的な判決が下された。大阪の格安タクシー会社「ワンコインドーム」が国による初乗り運賃の引き上げは「営業の自由の侵害」にあたると訴えた裁判だ。11月20日、大阪地裁は国の値上げ措置を「裁量権の逸脱・乱用」としてワンコインドームの主張を認めた。判決後の記者会見で同社の町野勝康社長は、判決をこう評価した。
「国に一矢報いることができた。公定幅運賃は、庶民のための安いタクシーをつぶすものだ」
ここでもタクシー業界の潮目が変わるかもしれない。
※週刊ポスト2015年12月11日号