国際情報

「偽情報」作戦で中国軍に勝利 日本軍の諜報能力は凄かった

 外交の裏には熾烈な“情報戦”がある。戦時となればなおさらだ。日中戦争当時、圧倒的な戦力差を「情報力」で挽回し、日本軍が勝利した戦いがあった。

 しばしば「日本軍は情報戦に負けた」といわれる。しかし、日中戦争当時、中国戦線では、情報を利用し作戦を成功させた例も多い。

 インテリジェンス研究の専門家である防衛省防衛研究所の小谷賢氏が解説する。

「陸軍は明治の頃から、中国大陸で情報収集を続けてきました。日中戦争当時も、支那派遣軍の情報部や占領地の憲兵隊、部隊に属さない『特務機関』などが各地で諜報・工作活動をしていた。

 そうした人的情報に加え、通信傍受で得た情報を作戦に役立てた例もあります。1941年5~6月の『中原会戦』は、通信情報を上手く作戦に結び付け、数的不利を覆して日本軍が勝利した好例です」

 山西省南部で行われたこの戦闘では、中国軍26個師団に対し、日本軍は北支那方面軍6個師団その他という半分以下の戦力で対峙した。

 戦闘の直前、日本軍の作戦課と情報課が議論し、中国側に偽電(偽の通信情報)を流すことを決定。日本軍の配置や戦力を実際よりも多く見せ、中国軍を混乱させることが狙いだった。

 戦闘が始まると、その混乱ぶりが通信傍受により日本軍へ筒抜けになる。それが情報課から作戦課へと伝達され、その情報を基に日本軍は攻撃を開始。中国軍を撃滅することに成功した。

「日本軍の情報運用は、戦術面で確かに優れていた。それぞれの戦場では情報部門と作戦部門の連携もできていました。そのことが、日中戦争で戦いを有利に進められた要因でもある。

 しかし、集められた情報を総合的に分析し運用する戦略的な視点が欠けていた。背景には、日本軍での情報部の地位の低さに始まり、情報集約機関の不在と、横の連携を取ろうとしない各組織の縄張り意識などがあります」

 日本軍の成功と失敗から、教訓とすべきことは多い。

※SAPIO2015年12月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン