国内

佐野眞一氏「SEALDsは面白いノンフィクションにはならない」

SEALDsのシュプレヒコール(2015年8月14日、国会前)

 学生時代、左翼運動にどっぷり浸かっていた経験を持つノンフィクション作家・佐野眞一氏は現在60年安保闘争当時、全学連委員長だった唐牛健太郎の評伝を取材中だが、SEALDs(シールズ=自由と民主主義のための学生緊急行動)に代表される昨今の大衆運動には、取材者としてまったく触手が動かない、と語る。一体なぜか。

 * * *
 私の入った大学(早稲田大学)は学生運動が盛んで、私も入学と同時にある党派に誘われて入った。だが、すぐに内ゲバの季節に入った。左翼運動とはこんなものだったのか。その現実に幻滅して、自分の方から学生運動とは一線を引いた。

 その頃、昔の活動家仲間と喫茶店に入り、別れて外に出ると、救急車がその店の方に急行していくのが見えた。翌日の新聞に、活動家がバールで頭蓋骨陥没という記事が載ったのを見て震えがきた。それ以来、学生運動とは完全に決別した。

 これは大学卒業後のことだが、歴史学者の網野善彦の『異形の王権』を読んでいて、中世に流行した覆面と石礫は権力の及ばないアジール(聖域)に向かっての庶民のはかない抵抗ではなかったか、という記述にぶつかって心から驚かされた。

 覆面とはすなわちヘルメットや催涙ガス除けのマスクのことであり、石礫とは文字通り投石のことである。統治権力が及ばない世界に対しては、覆面で顔を覆って素顔を隠し、見えない場所から石礫でも投げる以外に憂さの晴らしようがない。なるほど、われわれ世代の学生運動は各地の成人式で暴れる若者とあまり変わらなかったのかも知れない。

 要するにわれわれの学生運動は、中世の抵抗運動と地つづきであり、大人になるためのイニシエーション(正式の社会人に承認されるための通過儀礼)の一種だった。そう思うと、学生運動も若気のいたりでやったとばかりは言えなくなった。

 それは60年安保闘争を闘った唐牛健太郎も、安倍総理の安保法制化に反対するSEALDsの若者も、あまり変わりがないのかもしれない。

関連記事

トピックス

炊き出しボランティアのほとんどは、真面目な運営なのだが……(写真提供/イメージマート)
「昔はやんちゃだった」グループによる炊き出しボランティアに紛れ込む”不届きな輩たち” 一部で強引な資金調達を行う者や貧困ビジネスに誘うリクルーターも
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
藤浪晋太郎(左)に目をつけたのはDeNAの南場智子球団オーナー(時事通信フォト)
《藤浪晋太郎の“復活計画”が進行中》獲得決めたDeNAの南場智子球団オーナーの“勝算” DeNAのトレーニング施設『DOCK』で「科学的に再生させる方針」
週刊ポスト
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
「漫才&コント 二刀流No.1決定戦」と題したお笑い賞レース『ダブルインパクト』(番組公式HPより)
夏のお笑い賞レースがついに開催!漫才・コントの二刀流『ダブルインパクト』への期待と不安、“漫才とコントの境界線問題”は?
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン
韓国・李在明大統領の黒い交際疑惑(時事通信フォト)
「市長の執務室で机に土足の足を乗せてふんぞり返る男性と…」韓国・李在明大統領“マフィアと交際”疑惑のツーショットが拡散 蜜月を示す複数の情報も
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
高校時代にレイプ被害で自主退学に追い込まれ…過去の交際男性から「顔は好きじゃない」中核派“謎の美女”が明かす人生の転換点
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《死刑執行》座間9人殺害の白石死刑囚が語っていた「殺害せずに解放した女性」のこと 判断基準にしていたのは「金を得るための恐怖のフローチャート」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン