国際情報

オバマ政権の8年でアメリカは明らかに劣化と落合信彦氏実感

 作家・落合信彦氏は先般、母校であるオルブライト大学の卒業50周年を記念したホームカミングパーティに出席するために渡米し、約2週間にわたってアメリカに滞在した。大学があるペンシルバニア州レディングのほか、ワシントンD.C.やフィラデルフィア、ボストンなどの都市も訪れたというが、2年前の訪米時と比べても大きな変貌を感じ取ったという。落合氏が指摘する変化とは。

 * * *
 それは、新しい移民が社会のあらゆるところに定着しているということだ。

 運転手、飲食店の従業員だけではなく、各都市でも超一流とされるホテルでもエチオピアやジャマイカ、メキシコといった国々からの移民ばかりがサービスマンとして働いていた。かつて訪米した時には白人がやっていた仕事が、どこもかしこも移民に置き換わっていたのだ。

 アメリカは成り立ちからして「移民の国」ではあるが、今の人口3億人あまりのうち5000万人が新しい移民であり、イリーガル(不法移民)が1200万人もいる。

 オバマは、2014年11月に移民制度改革を発表し、一定の条件を満たした不法移民の滞在や労働を認める方針を打ち出した。彼らは人件費が安いから、ホテルや飲食店などはどんどん彼らを雇用しているのだ。

 さらに、オバマは貧困層に対する救済策を拡充した。それによってアメリカは〝不法移民にもカネをバラ撒いてくれる国〟とのイメージが広がり、メキシコなどからの不法入国者が激増している。

 オバマの政策は、アメリカを酷く不健全にした。2008年の大統領選で、オバマは「アメリカの格差をなくさなければならない」「再分配して所得をできるだけ平等にしなければならない」と公約を掲げた。それを実行した結果、どうなったか。

 働けるのに働かない者にまで生活保護を与え、バラ撒きを強化し、その原資を中産階級から税金として取り上げたことにより、中産階級が没落して貧困層が増えた。一方で富める者はますます富を蓄え、上位1%の人々の富が下位90%のそれを超えるほどに格差が拡大したのである。

 そして移民だ。イリーガルまで次々に受け入れたことによって社会は不安定になった。移民からは「もっと福祉の充実を」という声があがる一方で、「仕事が奪われる」「税金が重くなる」として移民を敵視する人々が生まれた。差別的な発言も許容される空気が出てきている。

 オバマの8年間で、明らかにアメリカは劣化した。なにしろ人々の表情が暗く、エネルギーを感じない。こんなアメリカは初めてだ。何人かの友人と話しても、口から出てくるのはオバマに関する愚痴ばかり。レーガン時代とはまったく違うアメリカになってしまった。その劣化が、世界を混沌に陥れているのではないかと感じた。

※SAPIO2016年1月号

関連キーワード

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン