ライフ

年間1.3万人死ぬ糖尿病 iPS細胞活用できれば完治も夢でない

 今は治療法が確立されていない病でも、5年後なら──そんな期待を抱かせる多くの興味深い研究が世界各国で進められている。例えば、国内で年間約1万3000人が亡くなる糖尿病。I型糖尿病は生活習慣とは「無関係」に、血糖値を下げる働きを持つインスリンが分泌されなくなる病気だ。膵臓のβ細胞が破壊されることで生じる。子供なのに透析生活を強いられる患者も少なくない。

 この糖尿病を抜本的に治療すべく、山中伸弥・京大教授が所長を務めるiPS細胞研究所は、iPS細胞などの幹細胞を使ったβ細胞の作成に心血を注ぐ。

 すでに米ハーバード大学などのチームがヒトの幹細胞からインスリンを分泌する細胞を作成することに成功している。この細胞を手術で人体に移植すれば、インスリン分泌の機能が回復するかもしれないのだ。そうなれば、I型糖尿病の完治も夢ではない。

 また、実は中高年の死者が少なくない「ぜんそく」は、従来の薬物治療では発作を十全にコントロールできないが、「気管支サーモプラスティ」ならば話は別だ。

 口から電極付きカテーテルを気管支の奥まで挿入し、65度の高周波電流で10秒間にわたって、肥大して気道を狭めている筋肉を温める。熱で筋肉量を減らし、気道の広さを確保するのだ。手術後の入院は必要になるが、3回治療を行なえば、重症発作の回数が激減するという。症例は少ないものの、治療は始まっている。

 最後に夢のある話を。米・ウォールストリートジャーナルなどによると、寿命を延ばすとされる薬「メトホルミン」の臨床試験をアメリカの米食品医薬品局(FDA)が世界で初めて承認した。

 元々、糖尿病の治療薬として広く使われていたが、英カーディフ大学の研究者が調べたところ、この薬を投与された糖尿病患者が、他の患者より平均8年も長生きしたことから研究を始めたのだという。

 研究者は投薬により人間の老化を20年遅らせる効果があると主張している。山野医療専門学校副校長で医学博士の中原英臣氏も興味津々だ。

「メトホルミンは世界中で古くから使われている安価な薬です。医療の世界では、薬が本来とは違う効果を持つことは多々あるので、ひょっとすると……」

 あと5年もすれば、90歳や100歳なんて当たり前、「寿命120歳」なんて時代が訪れるかもしれない。

※週刊ポスト2016年1月1・8日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

マムカ司令官
【ウクライナの戦場取材でYOASOBI】報道カメラマンがウクライナで戦うジョージア部隊「世界初の最前線取材」の許可を得るまで ドーベルマンとフィアット500に乗り、車内で『夜に駆ける』
NEWSポストセブン
1990年代、多くの人気バラエティ番組で活躍していたタレント・大東めぐみさん
《交通事故で骨折と顔の左側の歯が挫滅》重傷負ったタレントの大東めぐみ「レギュラーやCM失い仕事ほぼゼロに」後遺症で15年間運転できず
NEWSポストセブン
ポータブルトイレの大切さを発信するYoutuber・わさびちゃん
「そもそもトイレの話がタブー過ぎる」Youtuberわさびちゃんが「トイレ動画」を公開しまくるようになったきっかけ「芸人で恥ずかしいこともないし、夫に提案」
NEWSポストセブン
1990年代、多くの人気バラエティ番組で活躍していたタレント・大東めぐみさん
《事務所が猛反対もプロ野球選手と電撃結婚》元バラドルの大東めぐみ、人気絶頂で東京から大阪へ移住した理由「『最近はテレビに出ないね』とよく言われるのですが…全然平気」
NEWSポストセブン
全国で車中泊をしているわさびちゃん夫婦。夫は元お笑い芸人のピーチキス・けん。
YouTuber・わさびちゃんが「トイレ動画」でバズるまでの紆余曲折「芸人時代に“女”を求められたり、男性芸人から嫉妬されたり…」
NEWSポストセブン
悠仁さまに関心を寄せるのは日本人だけではない(時事通信フォト)
〈悠仁親王の直接の先輩が質問に何でも答えます!〉中国SNSに現れた“筑波大の先輩”名乗る中国人留学生が「投稿全削除」のワケ《中国で炎上》
週刊ポスト
「ビッグダディ」こと林下清志さん(60)
《借金で10年間消息不明の息子も》ビッグダディが明かす“4男5女と三つ子”の子供たちの現在「メイドカフェ店員」「コンビニ店長」「3児の母」番組終了から12年
NEWSポストセブン
リシェット
戦場取材に欠かせない「フィクサー」とは? ウクライナ入りした報道カメラマンが紹介された“取材に愛犬を連れて来る男” ギャラは「1日1500ドル」と法外な金額に
NEWSポストセブン
女児盗撮の疑いで逮捕の小瀬村史也容疑者(37)。新たに”わいせつ行為”の余罪が明らかになった
「よくタブレットで子どもを撮っていた」不同意わいせつ行為で再逮捕の小瀬村史也容疑者が“盗撮し放題だったワケ” 保護者は「『(被害者は)わからない』の一点張りで…」
NEWSポストセブン
成年式を控える悠仁さまと第1子を出産したばかりの眞子さん(写真・右/JMPA)
眞子さん、悠仁さまの成年式を欠席か いまなお秋篠宮家との断絶は根深く、連絡を取るのは佳子さまのみ “晴れの日に水を差す事態”への懸念も
女性セブン
「ビッグダディ」こと林下清志さん(60)
《多産DVを語ったビッグダディ》「子どもができたら勝手に堕ろすんじゃないぞ」4男6女の父として子供たちに厳しく言い聞かせた理由
NEWSポストセブン
ボニー・ブルーとの2ショット(インスタグラムより)
《タダで行為できます》金髪インフルエンサー(26)と関係を持った18歳青年「僕は楽しんだから、被害者になったわけじゃない」 “捕食者”との批判殺到に反論
NEWSポストセブン