ビジネス

VW問題から考える企業の真のガバナンス 日産相談役が答える

日産自動車の小枝至相談役

 昨年、世界で最も話題になった「企業問題」が、独・フォルクスワーゲン社の排ガス規制偽装問題だった。同じ自動車メーカーとして、日産自動車の小枝至相談役(74)はこの問題をどう受け止めたのか。

「本当に驚きました。私は(引責辞任した)ヴィンターコルン前CEOとは何回かお会いしたことがありますが、そんな感じの方ではなかったのですが…。

 疑惑が出てくると、会社のすべての車が危ないと思われてしまう。こうした問題を防ぐために最も問われているのは、『企業内のガバナンス』だと思います」

 最近では、東証が企業の株主価値を高めることにつながるコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)を定め、経営の透明化のために「社外取締役を増やすべき」と提唱し、一般にもその考えが浸透しつつある。だが小枝相談役は、本質はそこではないと指摘する。

「もちろん社外取締役を入れることはとても大切です。しかし、社外取締役を増やしたからといって必ずしもガバナンスが効くとは限りません。

(不正会計が問題になった)東芝だって、筆頭の社外取締役は有名な経済学者だった。社外の人間が内部の不正を見抜くのは相当難しい。大事なのは社内でトップに立つ人のモラル、そしてガバナンスに対する責任感だと思います」

 日本の自動車業界では2004年に三菱自動車工業のリコール隠しが大きな社会問題に発展した。この問題が起きる以前から、日産は社内体制を変えていたという。

「弊社ではリコールをするかしないかの決断は、急を要することですから現場の部長が担っています。担当役員や社長には事後報告なんです。日産ではこれを徹底している。もちろん膨大な支出を伴うためトップの会議には報告しますが、決断するのはトップではなく、あくまでも現場です」

 部下を信頼することこそが、トップの重要な責任というのが小枝相談役の考えだ。

※週刊ポスト2016年1月15・22日号

関連キーワード

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
リモートワークや打合せに使われることもあるカラオケボックス(写真提供/イメージマート)
《警視庁記者クラブの記者がカラオケボックスで乱痴気騒ぎ》個室内で「行為」に及ぶ人たちの実態 従業員の嘆き「珍しくない話」「注意に行くことになってるけど、仕事とはいえ嫌。逆ギレされることもある」 
NEWSポストセブン
「最長片道切符の旅」を達成した伊藤桃さん
「西国分寺から立川…2駅の移動に7時間半」11000kmを“一筆書き”した鉄旅タレント・伊藤桃が語る「過酷すぎるルート」と「撮り鉄」への本音
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱親方と白鵬氏
旧宮城野部屋力士の一斉改名で角界に波紋 白鵬氏の「鵬」が弟子たちの四股名から消え、「部屋再興がなくなった」「再興できても炎鵬がゼロからのスタートか」の声
NEWSポストセブン
環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(22)
《不敵な笑みでテロ組織のデモに参加》“環境少女グレタ・トゥンベリさん”の過激化が止まらずイギリスで逮捕「イスラエルに拿捕され、ギリシャに強制送還されたことも」
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン