国際情報

落合信彦氏が会った米情報機関員「米国より危ないのは日本」

カリフォルニア州の銃乱射テロ KNBC/AP/AFLO

 常々、日本のインテリジェンスに対する感度の低さを憂いてきた作家の落合信彦氏だが、それを身近で実感させられる出来事があったという。

 * * *
 アメリカが弱体化し、中国とロシアが増長して国際社会で傍若無人に振る舞い、世界各地でイスラム過激派などによるテロが頻発する私はその様子を「世界のジャングル化」と呼び、本連載でたびたび指摘してきた。

 2016年はそのジャングル化が一層進み、インテリジェンスなき国家は滅亡への道を歩むことになる。しかし、日本の諜報力と言えば残念ながら「無」に等しいのが現実だ。

 意外な場面で、日本のインテリジェンスの無能さを指摘された出来事があった。

 昨年の暮れ、東京・港区のアメリカ大使館にほど近い寿司屋に入った時のことだ。カウンター席に腰をかけると、私のすぐ横に2人組の白人男性が座った。見たところ50代と30代後半。2人とも背広姿でシャキッとしていた。彼らの英語からして、アメリカ人だった。

 多くのアメリカ人は、酒を飲んで食事していれば大声で話すものだ。しかし2人は、ヒソヒソと声を潜めて話していた。まず、それが不思議に映った。

 そのうち、私が英語を話せると分かると、会話が始まった。カリフォルニア州で起こったばかりの銃乱射事件の話題になった。私が「ISは、アメリカを本格的にターゲットとしてきたようだね」と言うと、彼らはすぐこう返してきた。

「アメリカより危ないのは、日本です」

 なぜか、と問うとこう続けた。

「日本には世界のすみずみまで網羅する情報機関がまったくないですからね。日本の政治家は、インテリジェンスに対する意識が低い。

 カネさえ出せばアメリカやイギリスなどから情報がもらえると思っているようですが、それは大きな間違いです」

「もう日本にもテロリストが潜入しているんじゃないですかね」

 それ以外にもずいぶん会話をしたが、彼らは、日本の現状についてやけに詳しく、さらにインテリジェンスの世界で交わされる独特の言葉使いをしていた。彼らからもらった名刺にはある金融系企業の社名が入っており、2人の男はその幹部だった。

 CIAが、民間企業の幹部のカヴァー(表向きの身分)で活動していることは珍しくない。彼らも、何らかの形でアメリカの情報機関と関わっているのだろう。

 彼らが指摘した通り、いや、実際はそれ以上に、日本のインテリジェンスはお粗末な状況にある。

※SAPIO2015年2月号

関連キーワード

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト