──3000人が観ればいいって発想にはならない。
百田:うん絶対ならない。作家になってテレビとの差を歴然と感じましたね。たとえば夜9時台の番組で視聴率3%とか取ったら、番組なんかすぐに打ち切り。でも3%って悲惨な数字ですが、それでも360万人ぐらいは観てるんですよ。
──本でいったら……。
百田:すごいですよ、村上春樹さんの新刊がどんだけ売れても360万は売れないですから。それがテレビだと「3%? お前ら死ねや!」って言われるぐらいの数字なんですよね。だから現代でいう文芸はどれほどの影響力のある文化かと思うと、これは鉄道オタク以下の世界じゃないかと。
──『タモリ倶楽部』で扱われるぐらいのマニアの世界ってことですね(笑)。
百田:文楽のファンの数と変わらない気がするんですね。そういう世界のなかで、いわゆる作家村とか文芸評論家とかがふんぞり返ってるように見えるんですよ。「どうして、そんな偉そうにできるの?」と。私は売れてなんぼやと思います。
視聴率がいい番組は、多くの人が喜んだ番組なんです。たくさん本が売れたということは、多くの読者が喜んだ本なんです。売れなかった本というのは、読者が喜ばなかった本なんですよ。私は読者が喜ぶために本を書いてるんで。
【プロフィール】ひゃくた・なおき:1956年大阪生まれ。同志社大学中退後、放送作家になり、『探偵!ナイトスクープ』のチーフライターを務める傍ら、2006年に『永遠の0』を発表し、小説家デビュー。『永遠の0』『海賊とよばれた男』『夢を売る男』『フォルトゥナの瞳』などのベストセラーを連発。2015年には初の新書『大放言』も話題になった。
※週刊ポスト2016年1月15・22日号