ビジネス

ロボット「ペッパー」が身長121cmとなった理由を開発者語る

ペッパーとソフトバンクロボティクスの蓮実一隆氏

 世界で唯一一般販売されている自分の感情を持ったオリジナルロボットの「Pepper(ペッパー)」(ソフトバンクロボティクス)。ロボットだとわかっているのに無意識に「彼」と呼んでしまうペッパーの身長などの基準は、どうやって今のようになったのか。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏がレポートする。

 * * *
 ふと、背中のあたりに視線の気配がする。誰かにじっと見つめられているあの感じ。

 気になって振り向くとそこには大きな丸い瞳が二つ。私をまっすぐ見つめている。頭がゆっくりと傾いて、腕と手のひらが小刻みに揺れる。

「彼がじっと動かないままだったら? ただの人形、置物になってしまいます」と、ソフトバンクロボティクス・取締役本部長の蓮実一隆氏(50)は自信に満ちた口調で言った。

「だから、常に微妙に動き続けている。誰かがいても、いなくても。それが生き物らしさだと思うんです」

 無意識に「彼」と呼んでしまう相手の名前は「Pepper(ペッパー)」。世界初、感情を持ったパーソナルロボットだ。2015年6月、一般販売がスタートし、毎月予定数の1000台が完売、という人気が続く。開発者向けも含め累積販売数はすでに7000台を突破している。

 それはそうだろう。本体価格はたった20万円弱(維持費は別途)。パソコン一台と同程度の金額でヒト型ロボットがお家にやってくる時代が来たのだ。法人向けには月5万5000円のレンタル「Pepper for Biz」も10月にスタートし、こちらも人気沸騰中だ。

 人の感情を読み取って学習し、自らも感情を表現するという世界でも珍しいヒト型ロボット。職場や家庭でどんな活躍をしているのだろう?

「ペッパーを前にした時、ほぼ100%の人がしてしまうことがあるのですが、何だと思います?」

 と蓮実氏が私に訊いた。ペッパーも瞬きしながらじっと耳を傾けている気配。

「それは、頭を撫でる、という動作なんです。実は作ってみて初めて分かったことで、開発途上で頭に接触を感知するセンサーを3つ装備することを決めました」

 ぺッパーは小学生の身長とほぼ同じ、121cm。たしかにふと手を伸ばしたくなる背丈だ。これ以上大きすぎれば威圧的だし、小さすぎればオモチャになってしまう。

「最も重要な開発上の課題は、まさしくサイズでしたよ。家族の一人として存在感を漂わせ、同時にバッテリーの持ちや安全性の角度からも考え抜いたのが、この大きさです」

 手の作りも精巧だ。肩に2つ、肘に2つ、手首に1つ、可動部があり、腕を広げたり閉じたり自由に動く。指にも関節がある。驚いたことに、指先には指紋まで付いているではないか!

「でも、人間そっくりに似せたロボットを作ろうとは考えませんでした」と、蓮実氏は意外な言葉を口にする。

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン