価値観が多様化し、さまざまな埋葬方法を希望する人が出てきている。昨今、貧困などから墓を購入する余裕がなく、遺骨を電車の網棚などに放置する例も出ている。だからこそ、遺骨の扱いに苦慮する人もいる。そんな中、「散骨」の希望者は少なくない。デヴィッド・ボウイさんや淡路恵子さんなども、そんな希望をしていた。
では、日本で散骨を考えるにあたって、まず第一にしなければいけないことはなにか。それは、「粉骨」だ。欧米では、遺体は1000~1200度の高温で焼き、遺灰にするが、日本の炉の温度は800度くらい。それは日本に、火葬後、遺族が骨を拾い上げる遺骨収集の慣習があるためだ。
それゆえ、遺骨を散骨しようと決めた際、骨を粉状にしなければいけないが、身内が骨を砕く作業は精神的負担が大きすぎる。それを代わりにやってくれるのが粉骨代行サービスだ。
昨年11月に千葉県で粉骨代行サービス『まごころ』をスタートさせた、舘山文成さん(44才)が言う。
「このサービスを始めたのは、父が“ハワイの海で”と散骨を希望したことがきっかけでした。最初は、自分で粉骨しようと思ったのですが、いざ遺骨をすり鉢に入れるとこみあげてくるものがあって…。結局粉骨は業者に依頼したのですが、戸惑うことばかりでした。そんな心のひっかかりがずっとあったのですが、遺骨遺棄の事件を知ってショックで…それで会社を設立しました。
散骨はお墓を建てるより断然安く、ご遺族のかたの背負ってきた負担を軽減できる葬法です。思い悩んで遺骨を捨てるという前に、粉骨・散骨という選択肢を知ってほしい」(以下「」内、舘山さん)
まだちょっとよくわからないというあなたのために、舘山さんが骨の話をあますことなくしてくれた。
粉骨は四十九日後、散骨は数年後というケースも。
「粉骨(散骨を希望)をするのは夫婦や親きょうだいなど“近しい”関係の遺骨がほとんど。粉骨の問い合わせは火葬後すぐにいただきますが、実際に粉骨されるのは四十九日が終わってからですね。散骨は天候や場所、遺族の都合に合わせるため、数年後に行うケースも多いです」
海洋散骨の場合、冬は海が荒れるので春以降に行うことが多いという。遺骨は郵送でも発送可。だが、持ち込みが多い。なお、日本では遺骨の送付は郵便局でのみ受け付けている。
「お客様のほとんどが郵送かと思ったのですが、7割以上が持ち込み。ちゃんとやっているか、見届けたいのでしょう。指輪や金歯など遺品はすべて返却します。分骨用にも遺灰を小分けしてお渡ししているのですが、佃煮の空き瓶を2つ持ってこられたかたもいました。骨壺は個人情報を消去し、こちらで処分しています」