昨年以降、韓国の高級ホテル業界は生き残りをかけた「ダンピング競争」を始めている。中には、通常料金より55%も割引する高級ホテルもあるほどだ。しかし、“買い出し”中国人客を呼び込むには、さらに料金を半分にしないと難しいだろう。
訪韓日本人の減少は、韓国の旅行代理店などにも大きな影を落としている。韓国の国内観光協会の加盟会社は、ソウルだけでも5000社を数える。そもそも多過ぎるうえに、ほとんどが中小零細業者で経営基盤は脆弱だ。
それでも、日本人観光客の減少を中国人観光客の増加が相殺しているのであればまだいい。しかし、訪韓中国人をアテンドする中国の旅行業者は、ツアーバスなど何から何まで儲けが自分たちの懐に入る仕組みを作り上げているため、訪韓中国人が増えても韓国の旅行業者にカネが落ちないのが現実だ。そのため、日本人観光客の減少は大きなダメージとなっており、小さくなったパイを奪い合う過当競争が激化している。その中で、中小零細業者が何社生き残れるのか、はなはだ疑問だ。
【PROFILE】1969年熊本県生まれ。東京都立大学(現・首都大学東京)経済学部卒業。NEC、日本IBMなどを経て2008年に中小企業診断士として独立。著書多数。近著『中国崩壊後の世界』(小学館新書)が話題。
※SAPIO2016年3月号