首都ジャカルタが位置するジャワ島は人口過密地域で、インドネシアが抱える人口、約2億5千万人の6割に当たる約1億3千万人が集中する。
特にジャカルタは近年、高層ビルの建設ラッシュが進み、車が溢れる街の渋滞問題は深刻化の一途をたどっている。政府は渋滞緩和策をこれまで実施してきたが、解消の兆しは見えない。そんな状況下で高速鉄道計画は進められた。
しかし、私が更地を訪れた段階では運輸省による建設許可が下りていないため、工事は一向に始まる気配を見せていなかった。
この更地から数百m離れた道路沿いの空き地には、重機4台と白いトラック5台が放置されたままで、周囲は閑散としていた。前述のディアンさんは語る。
「作業員たちは3月に戻って来ると聞いたわ。高速鉄道が走れば、バンドンからジャカルタまでの運賃は20万ルピアでしょ? お金があれば乗るかも。でも最近はジャカルタに行く用事もないしね」
地元住民から高速鉄道に対する需要は特に感じられない。中国案は鉄道とともに駅周辺の開発計画も掲げているが、こんなのどかな田園風景を破壊してまで街作りが必要なのか。そもそもこの高速鉄道事業は誰のための援助なのか。
※SAPIO2016年4月号