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【書評】コンビニの成功は「皆が反対したから」という経験則

【書評】『働く力を君に』鈴木敏文・著/勝見明・構成/講談社/1300円+税/装丁・鈴木成一デザイン室

【評者】岩瀬達哉(ノンフィクション作家)

 24時間営業のコンビニエンスストアは、もはや日常生活に欠かせない社会インフラである。そのコンビニ文化を、最初に日本に導入し、事業として成功させた鈴木敏文は、もとはと言えば、「当時はまだ店舗数が五店の中小企業」だったヨーカ堂(現・イトーヨーカ堂)に30歳で途中入社したごく普通のサラリーマンだった。

「社内外から猛烈な反対にあいながらも」、セブン-イレブンの日本法人の創業にこぎ着けたのは、常識への疑問と、成功への仮説があったからだ。大型スーパーが隆盛の時代に、小型店が太刀打ちできるはずがないという常識に対し、「商品の価値と生産性を高めれば小型店でも成り立つはず」と考えたのである。

 四面楚歌のなか、「みんなが賛成することはたいがい失敗し、みんなが反対することはたいてい成功する」との経験則が鈴木を支えた。「常識とは過去の経験の蓄積」だけに、「常識を破らなければ、感動を伝えられる仕事」はできないとの思いも鈴木を鼓舞し続けた。

 セブン銀行の設立を思い立った時も、メインバンクから「銀行なんてそんなに簡単にできるものじゃないからおやめなさい」とさんざん諭された。しかし、「コンビニの店舗にATMが設置されれば、利便性は飛躍的に高まり、ニーズに応えることができる」として、挑戦への意欲は萎えることはなかった。

「未来の可能性を見いだし、やるべき価値があると思って導き出した仮説は、どんなに既存の論理を重ねても否定できない」というのが“鈴木哲学”の神髄である。

 変化の激しい時代にあっては、組織のなかで敵を作らない「いい子」では生き残っていけない。「徹底して自分の仕事を追求し続けると、世の中の真実に到達でき」、充実した人生も手に入れられる。「振り返るとわたし自身は、行き当たりばったりの生き方をしてきました」と語る鈴木の歩みは、成功に裏打ちされていて、すべてのビジネスに通じるメソッドが詰まっている。

※週刊ポスト2016年3月11日号

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