──自分で馬を持つというのはどうですか。要するに自分で会社をつくる。
松本:それはダメです。私はそんな根性はないです。もう自分のことはよくわかっています。自分のお金で大きな勝負ができる人間ではありません。
──だから勝ち馬にしか乗らない。
松本:はい。人のお金だったら、勝っても負けても会社持ちだと思えるでしょう。私のサラリーマン生活で、一つ、そういう居直りがあるんですよね。しょせん会社なんて、勝っても負けても会社持ちだと。だからって、乱暴なことはやらない。絶対負けるのは嫌いだから、失敗したくないと思いながら、結構慎重にやるわけです。
──でも、カルビー以上の勝ち馬はないかもしれない。
松本:いや、それはあると思いますが、問題は、僕は今68(歳)です。68の人に新しいことをまかせるという会社が出てくるか。ただ、カルビーの仕事をやってると、やっぱりおもしろいな、会社を大きくするのは楽しいなと思います。どこかの会社の会長さんぐらいだったら、まだあと一つぐらいできるかもしれませんね。
──あと10年ぐらいはできるだろうと。
松本:かもしれませんね。
●まつもと・あきら/1947年、京都府生まれ。1972年、京都大学大学院農学研究科修士課程を修了後、伊藤忠商事に入社。1986年、センチュリーメディカル(株)へ取締役営業本部長として出向。1993年、ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル株式会社(現・ジョンソン・エンド・ジョンソン)に入社。1999年、同社日本法人社長に就任、最高顧問を経て、2009年、カルビー代表取締役会長兼CEOに就任。
※週刊ポスト2016年3月18日号