また、在京チベット筋が明かしたところでは、チベット住民が集まって、中国に対する抗議行動を起こさないように、近隣の5世帯の住民を一つの組織とする「隣組制度」がつくられ、住民同士が互いに監視し合う「スパイ網」が形成されている。住民は隣町に行くにも当局の許可が必要だ。住民が許可なく移動しても、すぐに居場所が分かるように、中国政府は個人の生体認証チップをはめ込んだ身分証を発行し、24時間携帯するよう命令。どこにいるかは常に把握しているなど、監視体制は厳重だ。

 さらに中国政府はチベット自治区の管理強化のため、中国人の流入政策を推進。2000年の人口統計では、チベット高原の人口約1000万人のうち、半数以上の540万人がチベット人だったが、現在ではチベット人600万人に対し、中国人は750万人と、中国人とチベット人の人口の逆転が起こっている。

 中国政府はチベット人と中国人の結婚を奨励する「混血政策」を打ち出した。この政策は徐々に功を奏しており、2008年末に、同自治区における異民族カップルは666組だったものが、2013年末には4795組と急増している。同筋は「チベット族と漢族のカップルには優先的に希望通りの職業が斡旋され、医療保険や子供の教育上の優遇策など手厚く保護されることも無視できない。異民族間の結婚によって、チベット独自の文化が失われる可能性が強い」と指摘する。

 これ以外でも、チベット人に対する政治、経済などあらゆる部門での差別と抑圧が実施され、「中国はチベットを完全に破壊しようとしている」とセンゲ氏は中国の非道ぶりを強く訴える。

※SAPIO2016年4月号

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