国際情報

毛沢東時代の大飢饉暴いた中国人記者が出国禁止に

 中国の国営新華社通信のエース記者として活躍し、毛沢東の失政によって1959年から1961年までの3年の間に発生した大飢饉の実態をまとめた書を発表した楊継縄氏が自宅軟禁状態になっていることが分かった。

 ハーバード大学が楊氏の著書を高く評価し、同書を年間でもっと優れたジャーナリストの作品として選出。楊氏を授賞式に招待したところ、中国当局は同書を発行禁止処分にするとともに、楊氏の出国を禁止した。米ニューヨーク・タイムズが報じた。

 楊氏は1940年11月、湖北省の生まれで、現在75歳。名門の清華大学を卒業後、1968年に新華社に入社、記者として活動し、1992年には中国でもっとも傑出したジャーナリストに選ばれている。

 同書は『墓碑―中国六十年代大飢荒紀実』(上・下、香港・天地図書)だが、邦訳として「毛沢東 大躍進秘録」(文芸春秋)がある。

 楊氏が大飢饉の実態を調べようとしたきっかけは、養父をこの飢饉で失ったためで、1990年代から精力的に調査を開始。

 同書によると、この大飢饉における死者数は国家統計局データを基にすると4770万人で、地方志や地方の統計を集計すると5318万人。しかし、楊氏の現地調査などでは不正常な死に方は3600万人、出生減4000万人で、結局人口損失は7600万人にのぼるという。

 楊氏は大飢饉がこのような大きな被害を出したことについて、毛沢東や劉少奇ら当時の最高指導部の責任感の欠如を挙げており、中国内で度重なる妨害を受けながらも、執念で同書をまとめたという。

 このため、同書は中国内ではなく香港で出版されており、しかも大陸内では発行禁止処分を受けている。

 しかし、ハーバード大学のジャーナリズム研究の高等教育機関、ニーマン協会は昨年末、同書に対して、「ルイス・M・リオンズ良心と正義賞」の授賞を決定し、今年3月に同大で行われる授賞式に楊氏を招待。しかし、中国当局は楊氏に対して出国禁止措置をとったことから、楊氏は式典には出席できなかった。

 中国では2012年秋の習近平指導部が発足して以来、言論弾圧の動きが強まっており、多くの言論人や人権活動家らも逮捕投獄されており、楊氏の出国禁止措置も習近平指導部の意向が強く反映されているのは間違いない。

関連キーワード

トピックス

”シカ発言”を受けて、日テレのニュース番組がまさかの事態になっている(時事通信フォト)
《日テレ“検証番組”が大炎上》「もはやネットリンチ」高市早苗の“シカ発言”で擁護派が過激化 日本テレビを〈仕込みの役者がインタビュー〉〈偏向報道〉と批判 関係者は「事実無根」とバッサリ
NEWSポストセブン
たばこ祭りに参加した真矢と妻の石黒彩
《杖と車椅子で10メートルの距離を慎重に…》脳腫瘍のLUNA SEA・真矢が元モー娘。の妻と夫婦で地元祭りで“集合写真”に込めた想い
NEWSポストセブン
"外国人シカ暴行発言”が波紋を呼んでいる──(時事通信フォト)
「高市さんは1000年以上シカと生きてきた奈良市民ではない」高市早苗氏の“シカ愛国発言”に生粋の地元民が物申す「奈良のシカは野生」「むしろシカに襲われた観光客が緊急搬送も」
NEWSポストセブン
「めちゃくちゃ心理テストが好き」な若槻千夏
若槻千夏は「めちゃくちゃ心理テストが好き」占いとはどこが違うのか?臨床心理士が分析「人は最善の答えが欲しくなる」 
NEWSポストセブン
直面する新たな課題に宮内庁はどう対応するのか(写真/共同通信社)
《応募条件に「愛子さまが好きな方」》秋篠宮一家を批判する「皇室動画編集バイト」が求人サイトに多数掲載 直面する新しい課題に、宮内庁に求められる早急な対応
週刊ポスト
ポストシーズンに臨んでいる大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平、ポストシーズンで自宅の“警戒レベル”が上昇中 有名選手の留守宅が狙われる強盗事件が続出 遠征時には警備員を増員、パトカーが出動するなど地元警察と連携 
女性セブン
「週刊文春」の報道により小泉進次郎(時事通信フォト)
《小泉進次郎にステマ疑惑、勝手に離党騒動…》「出馬を取りやめたほうがいい」永田町から噴出する“進次郎おろし”と、小泉陣営の“ズレた問題意識”「そもそも緩い党員制度に問題ある」
NEWSポストセブン
懲役5年が言い渡されたハッシー
《人気棋士ハッシーに懲役5年判決》何度も「殺してやる」と呟き…元妻が証言した“クワで襲われた一部始終”「今も殺される夢を見る」
NEWSポストセブン
浅香光代さんの稽古場に異変が…
《浅香光代さんの浅草豪邸から内縁夫(91)が姿を消して…》“ミッチー・サッチー騒動”発端となった稽古場が「オフィスルーム」に様変わりしていた
NEWSポストセブン
群馬県前橋市の小川晶市長(42)が部下とラブホテルに訪れていることがわかった(左/共同通信)
【前橋市長のモテすぎ素顔】「ドデカいタケノコもって笑顔ふりまく市長なんて他にいない」「彼女を誰が車で送るかで小競り合い」高齢者まで“メロメロ”にする小川市長の“魅力伝説”
NEWSポストセブン
関係者が語る真美子さんの「意外なドラテク」(getty image/共同通信)
《ポルシェを慣れた手つきで…》真美子さんが大谷翔平を隣に乗せて帰宅、「奥さんが運転というのは珍しい」関係者が語った“意外なドライビングテクニック”
NEWSポストセブン
部下の既婚男性と複数回にわたってラブホテルを訪れていた小川晶市長(写真/共同通信社)
《部下とラブホ通い》前橋市・小川晶市長、県議時代は“前橋の長澤まさみ”と呼ばれ人気 結婚にはまったく興味がなくても「親密なパートナーは常にいる」という素顔 
女性セブン