「それだけ重圧を感じていたということです。ただ、『意図的に邪魔された』という羽生の発言には、『そこまで怒ることではないだろう』と不快感を抱いた国際スケート連盟関係者もいたようです。他の選手を尊重しない、“王者の驕り”と受けとめられれば、心証が悪くなり羽生にはマイナスになってしまう」(スポーツ紙担当記者)
テンはカザフスタン・アルマトイ出身の韓国系カザフスタン人。羽生が金メダルを獲得した2014年ソチ五輪で銅メダルを獲得したライバルであり、母国カザフスタンでは国民的英雄だ。
しかし、衝突騒動を受けてテンのもとには日本人からの誹謗中傷メールが殺到した。これに反発したカザフスタンのメディアは、「日本人はカザフスタン人や韓国人を見下していて人種差別的だ」と報じ、テン自身もインスタグラムで「私のメールボックスは、脅しや見知らぬ人からの嫌がらせ、人種差別的に私を非難するメールで溢れています」と明かした。
競技終了後、羽生からテンに握手を求めて和解したというが、どこか後味の悪さが残ってしまった。
“絶対王者”と呼ばれたからこそ、今後の羽生の戦いは苦戦を強いられる。審査員の目はより一層厳しく、またテンのほかにも、今回の世界選手権で羽生を下したスペインのハビエル・フェルナンデス(24才)、宿命のライバルであるカナダのパトリック・チャン(25才)、中国の新鋭・金博洋(18才)などが続々と羽生包囲網を敷く。
羽生を指導するブライアン・オーサー・コーチはこう話している。
「勝つという強い気持ちでここに来て、準備万端だった。それだけに立ち直るのは大変なんだ」
来年の戦いの火ぶたは、すでに切られている。
※女性セブン2016年4月21日号