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中国・北京で警官襲撃事件が激増している背景

北京の食堂

 中国社会は経済失速ととともに、治安も悪化している。拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。

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 経済減速が大きな話題となっている中国では、いま最も懸念されるのは社会の不安定化である。そんななか衝撃的なニュースを取り上げたのは『中国新聞ネット』(2016年03月24日 11:37)である。

 タイトルはズバリ〈今年1月からの3カ月間、北京で起きた警官襲撃事件は100件を超えた〉だった。

 統計は3月24日に発表された警察資料によるものだが、それによる24日現在、首都における警官襲撃事件は計109件。この襲撃により重軽傷を負った警官の数は49人に達したというから深刻である。警察が中新ネットの記者に明らかにした具体的なケースは、違法な商売を取り締まる過程で起きたという。

 3月4日、北京市公安局海淀分局花園路派出所勤務の警官が、道路を不法に占拠している露天商の取締りを行っていたところ、一人の果物を売っていた露天商と口論になったというのだ。

 問題はこの「胡」と名乗る露天商が営業許可証をもっていなかったことだった。そのため城管が胡の屋台を撤去しようとしたところ、胡が抵抗。最後には屋台に置いてあった大きな包丁を振りかざし、警官に襲い掛かったというのだ。切り付けられた警官は首に大けがを負ったという。

 記事の中で具体的に紹介されたケースは一つだが、警官が襲われるケースのほとんどはこれと同じように職務の執行中であったとされ、多くは商売の許可をめぐる者だと考えられている。これは、景気の悪化を受けて収入の見通しが立たなくなった人々が苛立ちを募らせていることが背景にあると思われる。

 かつての中国では違法行為があっても失業問題が引き起こされるよりはましとばかりに片目を瞑り、売春さえも見逃してきたとされている。

 だが、習近平指導部の下では法律違反も規律違反も厳しく取り締まられるようになっている。こうした妥協の余地のない習近平スタイルは、政治的には正しくても現実には大きな摩擦が起きることは避けられない。そんな一つの典型的なケースといえるのかもしれない。

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