「お子さんを亡くした親御さんをスタッフのかたがさりげなく気遣ってくれる。そんな思いやりに接すると本当にありがたいなと感じるんです」

 そう話す東京・世田谷区の「せたがやハウス」に宿泊中の群馬県からきた母親に対してカサノバは「もっと快適に過ごすために私たちにできることはありませんか?」と問いかける。カサノバは「ドナルド・マクドナルド・ハウス」についてこう解説する。

「病気の子供は、両親が近くにいた方が回復が早いという調査結果があるんです。

 何よりも長期間、子供の看病を続けるママ同士の情報交換の場、支え合いの場になっているようです。厳しい状況のときには“メンター”が必要なわけですから」

 ロシアに行くか迷っているときに背中を押してくれた父、仕事と生活のバランスを教えてくれる夫…。「メンター」とは精神的な支えになってくれる身近な人のことだ。彼女自身も人生の岐路に立つたび、多くのメンターに支えられたと実感している。

「仕事には、家族の理解、そして周囲の人たちのサポートが必要なんです」

 彼女は女性スタッフに会うと「店長になりたいですか」とよく質問する。しかし「私にはムリです」という答えが返ってくることがほとんど。それはマクドナルドに限った話ではない。多くの女性は責任ある仕事に挑戦したいと思いつつも、家庭との両立や能力に不安を抱えている。

「大切なのは自信を持つこと。チャンスを与えられたらまず引き受けてほしい。まだ準備ができていないと不安を覚える瞬間もあるかもしれません。でも私は、準備ができているからこそチャンスが与えられると思うんです」

 今は働き方も家族の関係も多様で複雑になっている。だからこそ、家族や支えてくれる人たちの存在が、新たな一歩を踏み出すときの自信に繋がるはずなのではないか。

「多くの人たちに支えられながらチャレンジを続けることで自信がゆるぎないものになるんです。最初から自信を持っている人なんていません。私自身がそうでしたから。自分に自信を与えてくれるような“メンター”を持つことも、とても大切なことです」

 カサノバは言う。何よりも子供を育てるお母さんの力になりたいんです、と。

※女性セブン2016年5月5日号

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