国際山岳医で医学博士の大城和恵さん


 心臓突然死が起きやすい人のデータがある。

●性別は男性
●34歳以上(欧州データ)
●登山の初日の午前中
●心筋梗塞、狭心症、高コレステロール、高血圧、糖尿病などの持病を持つ人
●運動不足の人

 アメリカの文献では、40才以上で血圧が高い人は動脈硬化を起こしやすいため、運動検査をしてから登山をするように注意喚起している。

「中高年の場合は、ほとんどが心筋梗塞です。動脈硬化を起こす一番の原因が高血圧なので、薬を飲んでいたとしても、血圧が十分コントロールできていない人はリスクが高いです。持病のある人は、しっかりと持病のコントロールをしていないと突然死の危険があります。病院で負荷心電図の検査などをして、治療してから行く方がいいのか、全く行けないのか、主治医に指導してもらってください。特に心筋梗塞を起こしたことがある人は、かなり慎重に検査してから山に行ってください」

 運動不足の人も注意が必要だ。年間2週間以上山を登っている人の方が、心臓突然死を起こす人が少なかったのに対し、年間2週間以下の人や運動不足の人はリスクが倍になるとのデータもある。

 登山中の突然死を防ぐ方法は、ゆっくり登る、持病の管理、水分補給、栄養補給、睡眠をとる、風邪などひいているときは登らないこと、と大城さん。

「登る速度の目安は、平地の半分のペース、お話をしながら登れるペースです。何もしない状態を0点、苦しくて何もできないのを10点とすると、3~4点程度のペースが心臓には負担が少ないと言われています。ですが、自分では速いつもりはなくても、ペースを守れていないことがほとんどです。交感神経の活性化だけでも脈が高くなってしまうところに運動をするので、かなり上がってしまい、休憩しても脈が下がらなくなってしまいます」

 登山をやめるべき体のサインは、尿の回数や量が少ない脱水状態が出ているときや、風邪や下痢、虫歯など体調がよくないときなど。前日の晩酌や睡眠不足、ちょっとした不調といったストレスが、心臓突然死に影響を与えることもわかってきている。

 万が一、登山中に心臓発作が起きた場合には、すぐに救助要請して、周りの人にAEDを持ってきてもらい、心臓が止まった場合に備えること。AEDは、気を失ってから10分経ったらほとんど効かなくなってしまう。大事なのは、意識を失い反応がなくなったら、すぐに心臓マッサージを始めること。思っているよりも危険度の高い登山。下山して病院に行くには時間がかかり、天気が悪いと救助ヘリも飛ばない。起きないように予防するのが最善の策となる。

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