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「自動車評論家」はあと20年もすれば消滅する

 モテ車を解説する「週刊ポスト」連載の「死ぬまで カーマニア宣言!」。これまでにクルマを40台買ってきたフリーライター・清水草一氏(54)が、「自動車評論家」の未来について解説する。

 * * *
 ご同輩諸君。諸兄は「自動車評論家」という仕事に憧れたことはないだろうか? 私は猛烈に憧れた。いや、それ以前にまず、学生時代は「自動車雑誌のスタッフになりたい」と願ったものである。そうすればいろいろなクルマに乗れるからだ。クルマ好き青年にとって、それは夢のような仕事に思えた。

 当時愛読していた自動車雑誌のスターは、なんと言っても、一昨年亡くなった自動車評論家・徳大寺有恒氏であった。

 氏が1976年に『間違いだらけのクルマ選び』の第一冊目を出版した当時、雑誌や本に特定車種の悪口が載ることなど皆無だった。しかし氏は当時の国産車をバッサバッサと斬った。それが大ベストセラーとなったおかげで、自動車だけは辛口評論が許されるようになったのである。

 日本では、自動車以外の製品、たとえば家電製品の辛口評論などが商業誌に載ることは未だにない。そんなことを書いたらすぐに広告を引き上げられてしまうからだ。しかし自動車に関してだけは、巨匠・徳大寺有恒が道を切り開いてくれたおかげで、我々後に続く者たちも本音を書くことが許されるようになった。心から感謝、そして合掌である。

 徳大寺氏が『間違いだらけのクルマ選び』を書いた当時、国産車にはろくでもない走りのクルマも多かった。だからこそ『間違いだらけのクルマ選び』だったわけだが、あれからちょうど40年。クルマの性能は飛躍的に向上し、出来損ないのクルマなどほとんど見つからなくなった。

 まあ、例の三菱の軽自動車のような例もあるが、あれに関して私は2年前、ライバル車(ホンダ・Nワゴン)と比較テストを行ない、「三菱・eKカスタムの方が断然加速が悪く、燃費も約2割悪かった」と自動車雑誌にレポートを書いている。自動車評論家というと、「いい加減なゴマスリ記事を書いてメーカーの接待を受けているんだろう」といったうがった見方もあるが、ジャーナリズムは存在すると自負している。

 といっても、出来損ないのクルマがほとんどなくなったため、ジャーナリズムを発揮する機会は多くない。今求められているのは、一般ユーザーに向けてクルマのいい・悪いを報じることよりも、カーマニアに向けて、そのクルマに趣味性があるかないか、あるいは美女ウケはどうか(笑)といったレポートを書くことだ。時代の変化である。

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