応援上映2回目という30代女性はこう語る。
「このやさしい感じがいいんです。そしてポジティブな声援が続くのがいいんです。ああ、みんな、普段のストレスを、ポジティブな方向に向けているんだなって。私も頑張ろうって思うし、癒やされます」。
当然ながら、生身のスポーツ選手やミュージシャンへの応援と違い、スクリーンの向うへ声援は届くはずはなく、ゆえに、彼らからの反応はない。熱い声援は、観客自身に向けられているものでもあるのだろう。
その日、映画館の6、7割は若い女性だったが、カップルや男性も目に留まる。会社帰りと思しきお洒落な女性も少なくない。なぜ若者が「応援上映」にはまるのか。若者の消費行動に詳しいニッセイ基礎研究所の准主任研究員・久我尚子氏は、「つながり」「参加」「体験」というキーワードを挙げてこう分析する。
「他の応援者(ファンや仲間)との横の“つながり”、そしてただ観るだけでなく“参加”し、“体験”すること、これら3つが相乗効果を生み、人気につながっていると考えられます。今は旅行でも、単に旅先へ行くだけではなく、そこで何を体験できるかが求められるようになっています。特に、小さな頃からディズニーランドやゲームなど、多彩なエンターテインメントに親しんできた若い世代の心をつかむためには、これら3要素をいかに上手くちりばめられるかが重要になっていきます」
4DX上映では、“コウジのはちみつキッス”で甘い香りがたちこめたり、シンが大浴場で転倒する場面で座席に衝撃が起こるなどの特殊効果が体験できるという。何度でも、どのようにも楽しめる「キンプリ」。旋風はまだまだ続くとともに、「応援上映」は新しい映画鑑賞スタイルとして広がりを見せそうだ。