コラム

森永卓郎氏 2016年度の日本経済は再びマイナス成長へ

2016年度は再びマイナス成長へ?(森永卓郎氏)

 2015年度のGDP成長率(1次速報値)はプラス0.8%と、2年連続のマイナス成長はどうにか免れた。しかし、2016年度は再びマイナス成長に陥る可能性があるという。いったいどういうことなのか、経済アナリスト・森永卓郎氏が解説する。

 * * *
 今春闘の賃上げ率は、自動車や電機など主要製造業の労働組合で構成する金属労協の回答状況を見ると、昨年は平均2200円だった賃上げ額が1100円に半減しています。史上最高益となったトヨタ自動車でさえも、ベースアップ額が昨年の4000円から1500円へ大幅減となりました。

 安倍晋三総理の要請に従って各社が大幅賃上げに走った昨年の「官製春闘」の趣は、今年はほとんど見られないのが現状です。

 賃上げ額が昨年を大きく下回る中、年金はどうなっているのでしょう。昨年度は0.9%引き上げられた受給額は、昨年度の勤労者の名目手取り賃金変動率が前年比マイナス0.2%となったことを主要因に、物価・賃金によるスライドが行なわれず、昨年度と同額に据え置かれることとなりました。

 勤労者の賃金上昇率が半減することに加えて、年金額もまったく増えない。その一方で、物価だけは今後間違いなく上がりそうです。これまでは、日銀の金融緩和による物価押し上げ効果を原油価格の下落が全部相殺し、物価は上がっていませんでした。だが、原油価格はどうやら底を打ったと思われます。

 原油価格下落の一因として、米オバマ大統領がロシアにダメージを与える目的で、生産コストが1バレル=40ドルかかる米国のシェールオイル(頁岩油)を30ドルの価格で海外に輸出していたことがあります。だが、米国といえども赤字販売を無期限に続けることはさすがに無理だったのか、原油価格も上昇に転じています。当面は、大きく下落することはないと思われます。

 そうなれば、日銀の金融緩和の物価押し上げ効果が現実に発揮されることになるので、物価は年後半から上がっていくでしょう。

 賃金も年金も増えない中で物価が上がれば、国民の実質所得はマイナスになることが明白です。実質所得がマイナスという状況下では、GDPの6割を占める個人消費が落ち込むのは確実。したがって、GDP成長率がプラスになることなどあり得ないので、2016年度は再びマイナス成長に転落することが現実味を増したと考えられます。

※マネーポスト2016年夏号

関連キーワード

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン