国際情報

アメリカで自殺者が激増、中高年男性では43%も増加

クリントン氏にはFBIの捜査の手が迫る AP/AFLO

 問題発言ばかりを繰り返す不動産王のドナルド・トランプ氏が共和党大統領候補としての指名獲得をほぼ確定させたのは、アメリカ社会が劣化し、閉塞感に満ちているからだとジャーナリストの落合信彦氏は指摘している。では、次の大統領を民主党大統領候補に指名されるヒラリー・クリントン氏にすればよいのか。これから起こりうるアメリカという大国のゆくえについて、落合氏が解説する。

 * * *
 アメリカ社会の劣化と閉塞は、一般の市民をも追い詰めている。自殺が急増しているのだ。

 この4月にアメリカ疾病対策センター(CDC)が発表した統計は、驚くべきものだった。1986年から1999年にかけて減っていた自殺が一気に増えて、2014年までの15年間で24%も増加した。中でも45~64歳の男性の自殺が増えていて、43%も増加した。

 もっとも多い自殺の理由は経済的なものである。貧困に陥り、希望もなく、自ら命を絶つ。それが夢にあふれていたアメリカの現在の姿なのだ。

 かつては国民の85%を占めていた中産階級は、いまや30%ほどになってしまった。格差が拡大し、中産階級から没落した人々が増えていることと自殺の増加には大きな関係がある。

 そのアメリカを、次なる大統領は立て直せるか。残念ながらトランプにもヒラリーにも不可能だろう。トランプはまったく経済を知らないし、外交に関する知識もない。これまで高額所得者には減税すると言っていたのが急に増税すると言い始めるなど、政策には一貫性がない。

 トランプが「在日米軍の駐留経費は日本がすべて負担すべき」とも言っていたが、彼は日米同盟の文書を読んだこともないのだろう。日本が多額の思いやり予算を支払っていることすら知らなかった。その程度の見識しか持っていないのだ。

 一方のヒラリーも、私がかねて指摘していた通り、メール問題でFBIによる事情聴取を受ける見込みとなった。彼女が刑事責任を問われる可能性は十分にある。

 現時点では、トランプとヒラリー、どちらが大統領になるか、まったく予断を許さない。だが、もしヒラリーが刑事責任を問われることになれば、あっさりとトランプで決まってしまう。

 トランプが大統領就任演説でどんなことをしゃべるのか、想像すると笑ってしまう。と同時に、トランプのまわりにいるカネと利権漁りのことばかり考えているような輩がホワイトハウスに入ることを考えると、空恐ろしくもなる。

 そうなったら本当に、アメリカというかつての大国は滅びの道を歩むことになるのではないか。

※SAPIO2016年7月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
ヒグマが自動車事故と同等の力で夫の皮膚や体内組織を損傷…60代夫婦が「熊の通り道」で直面した“衝撃の恐怖体験”《2000年代に発生したクマ被害》
NEWSポストセブン
対談を行った歌人の俵万智さんと動物言語学者の鈴木俊貴さん
歌人・俵万智さんと「鳥の言葉がわかる」鈴木俊貴さんが送る令和の子どもたちへメッセージ「体験を言葉で振り返る時間こそが人間のいとなみ」【特別対談】
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン
佳子さまの“ショッキングピンク”のドレスが話題に(時事通信フォト)
《5万円超の“蛍光ピンク服”》佳子さまがお召しになった“推しブランド”…過去にもロイヤルブルーの “イロチ”ドレス、ブラジル訪問では「カメリアワンピース」が話題に
NEWSポストセブン
「横浜アンパンマンこどもミュージアム」でパパ同士のケンカが拡散された(目撃者提供)
《フル動画入手》アンパンマンショー“パパ同士のケンカ”のきっかけは戦慄の頭突き…目撃者が語る 施設側は「今後もスタッフ一丸となって対応」
NEWSポストセブン
大谷翔平を支え続けた真美子さん
《大谷翔平よりもスゴイ?》真美子さんの完璧“MVP妻”伝説「奥様会へのお土産は1万5000円のケーキ」「パレードでスポンサー企業のペットボトル」…“夫婦でCM共演”への期待も
週刊ポスト
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン