国際情報

ダライ・ラマ 60年以上も帰れぬ故郷への思いを語る

 チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世はドイツ紙「フランクフルター・アルゲマイネ」の単独会見で、「中国国内の体制は大きな転換期にある。これは、数十万にも及ぶ中国人留学生の存在が大きい。彼らが欧州諸国や米国、日本あるいはオーストラリアやインドなどに留学して、民主主義を直に肌で感じ取っていることが大きく影響している」と指摘した。

 同紙の記者がダライ・ラマに「中国内の体制が今後も大きく転換し続けていけば、チベットへ帰ることができると思うか」と質問。

 ダライ・ラマは「おそらくは、数年先のことになるだろう。もし帰ることができれば、せめて1度だけでも、短期滞在だけでもできるのならば、これほど幸せなことはない」と述べて、60年以上も帰っていない故郷への思いを募らせた。

 これに関連して、ダライ・ラマは15日、米ホワイトハウスで、オバマ大統領と会見した際、今年は中国の政治的な動乱である文化大革命(1966~1976年)が発生してから50年が経過しているが、現在では当時の宗教が禁じられていた状況から大きく変化しており、中国国内の仏教徒の数は世界一になっていると述べた。このため、共産党政権がいくら強大だとしても、かつての文革時代のような閉鎖的な社会に戻ることはできないと指摘した。

 今回のオバマ大統領とダライ・ラマの会見について、中国共産党機関紙「人民日報」傘下の国問題専門紙「環球時報」は16日、「オバマとダライ・ラマの面会、中国人はそこに何を見るのか」と題する社説を掲載。

 今回の会談は米国政府による「話題づくり」と決めつけたうえで、「チベット問題で主導権を握っているのは中国政府だ」と前置き。そのうえで、チベット経済が絶えず発展し、社会が安定を続けるなら、米国の大統領がダライ・ラマに会うことは一種の自己満足のショーにすぎないと主張。「ダライ・ラマとオバマ大統領に対する中国政府の最も有力な反撃は、チベットをしっかりと管理し、発展させ続けることだ」と強調した。

 そのうえで、社説は「ダライ・ラマは完全に祖国やチベットの民衆、チベット仏教の根本的利益に背いている。ダライ・ラマはすでに81歳であり、彼は最後に祖国の団結と中国の平和的台頭を破壊するための主導的役割を果たそうとしている」と激しくダライ・ラマを攻撃している。

 このため、中国側は近い将来、ダライ・ラマの帰国を認めることはないとみられるが、現在79歳のダライ・ラマ自身も「今後10年から20年は中国の変化をウォッチしていきたい」と常々述べている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
「『あまり外に出られない。ごめんね』と…」”普通の主婦”だった安福久美子容疑者の「26年間の隠伏での変化」、知人は「普段通りの生活が“透明人間”になる手段だったのか…」《名古屋主婦殺人》
NEWSポストセブン
兵庫県知事選挙が告示され、第一声を上げる政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏。2024年10月31日(時事通信フォト)
《名誉毀損で異例逮捕》NHK党・立花孝志容疑者は「NHKをぶっ壊す」で政界進出後、なぜ“デマゴーグ”となったのか?臨床心理士が分析
NEWSポストセブン
2025年九州場所
《デヴィ夫人はマス席だったが…》九州場所の向正面に「溜席の着物美人」が姿を見せる 四股名入りの「ジェラートピケ浴衣地ワンピース女性」も登場 チケット不足のなか15日間の観戦をどう続けるかが注目
NEWSポストセブン
「第44回全国豊かな海づくり大会」に出席された(2025年11月9日、撮影/JMPA)
《海づくり大会ご出席》皇后雅子さま、毎年恒例の“海”コーデ 今年はエメラルドブルーのセットアップをお召しに 白が爽やかさを演出し、装飾のブレードでメリハリをつける
NEWSポストセブン
昨年8月末にフジテレビを退社した元アナウンサーの渡邊渚さん
「今この瞬間を感じる」──PTSDを乗り越えた渡邊渚さんが綴る「ひたむきに刺し子」の効果
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《中村橋之助が婚約発表》三田寛子が元乃木坂46・能條愛未に伝えた「安心しなさい」の意味…夫・芝翫の不倫報道でも揺るがなかった“家族としての思い”
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
「秋らしいブラウンコーデも素敵」皇后雅子さま、ワントーンコーデに取り入れたのは30年以上ご愛用の「フェラガモのバッグ」
NEWSポストセブン
八田容疑者の祖母がNEWSポストセブンの取材に応じた(『大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会』公式Xより)
《別府・ひき逃げ殺人》大分県警が八田與一容疑者を「海底ゴミ引き揚げ」 で“徹底捜査”か、漁港関係者が話す”手がかり発見の可能性”「過去に骨が見つかったのは1回」
愛子さま(撮影/JMPA)
愛子さま、母校の学園祭に“秋の休日スタイル”で参加 出店でカリカリチーズ棒を購入、ラップバトルもご観覧 リラックスされたご様子でリフレッシュタイムを満喫 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、筑波大学の学園祭を満喫 ご学友と会場を回り、写真撮影の依頼にも快く応対 深い時間までファミレスでおしゃべりに興じ、自転車で颯爽と帰宅 
女性セブン
クマによる被害が相次いでいる(getty images/「クマダス」より)
「胃の内容物の多くは人肉だった」「(遺体に)餌として喰われた痕跡が確認」十和利山熊襲撃事件、人間の味を覚えた“複数”のツキノワグマが起こした惨劇《本州最悪の被害》
NEWSポストセブン
近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン