◆「両眼視」の機能を高めると目が疲れない

 その他にも、立体視は視力回復に重要な「両眼視の機能」を高める役割も果たしてくれる。

 通常、人は物を見るときに両目から入ってくる情報が脳に伝わり、2つの画像を融合させて立体感、距離感を得ることができる。しかし、徳永氏によると、人は片目だけを使って物を見ている場合が多いという。そうなると、良い方の目の情報を使おうとして悪い方の目の情報を制御してしまうため、視力は低下してしまう。

「両眼視の機能をアップさせるには、物との距離感、立体感をうまく感じることが大切です。ステレオグラムは両目を使わないと絵が浮かび上がって見えない仕組みになっています。

 そのため、両目をバランスよく使う訓練になり、両眼視機能を高めることができるのです。焦点を合わせることも楽になって、眼精疲労も減ってきます。視力の安定、目の疲労回復は、角膜や水晶体の歪みによって物がぼやけて見える乱視の改善にもつながってきます」(徳永氏)

 群馬パース大学学長で立体視の研究を行なっている栗田昌裕氏は立体視の精神面に及ぼす効果を次のように指摘する。

「人の目が近くに焦点を合わせようとするときには副交感神経(心身をリラックスさせる自律神経)、遠くの場合はその逆に交感神経(心身を活動させる自律神経)が働きます。立体視による焦点を合わせる訓練でバランスよく両方の神経の働きを高められ、『ストレスが解消する』『頭がスッキリする』といった効果が生まれます」

 近視、乱視、老眼にも効き、ストレス解消にも役立つとは“一石多鳥”だ。ただ絵を見るだけで簡単に訓練できてしまう「立体視」で目の健康を取り戻そう。

※週刊ポスト2016年7月1日号

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