7月の参院選から「18歳選挙権」が初めて導入される。新たに増える約240万人の有権者を引き込もうと、各党は若者へのアピールを強めるが、その方向性には疑問符がつく。若者に投票を促すことは有意義だが、各党の新有権者への媚び方はあまりに子供じみている。
自民党がネット世代に向けて、安倍晋三・首相を模したキャラが登場するゲームアプリ「あべぴょん」を出せば、公明党は党公認のゆるキャラ「コメ助」のゲームアプリを配信した。
4月29~30日に千葉市の幕張メッセで開かれた「ニコニコ超会議2016」ででは、自民党がアニメのイラストを施した「痛車(いたしゃ)」と呼ばれる選挙カーを出展すれば、共産党はゆるキャラを模した選挙カーで対抗。自共の張り合いに、「政策で競ってくれ」との冷めた声も聞かれた。
『18歳選挙世代は日本を変えるか』(ポプラ新書)の著者で若者を研究する原田曜平氏がいう。
「今の若者は真面目で謙虚。選挙権をどう生かすか、真剣に悩んでいる。小手先で漫画やアニメを使うのではなく、直球で政策を提示した方が、ずっといいと思う」
一方、いざ新有権者と対峙すると、肝心の政治家がタジタジとなる場面も。6月18日に大阪市内で開かれた政治討論会で民進党の山尾志桜里政調会長は、18歳の高校3年生から、「政治資金の問題は秘書でなく、政治家が責任を負うよう義務化すべきでないか」と「ド直球」の質問を受けた。
自らの政治資金報告書に「地球5周分」のガソリン代を記載した責任を、「元秘書の不正」との理由で回避していた山尾氏は、思わぬ問いに表情を強張らせ、「活動経費の使い道を公開する法律などを成立させ、政治家みんなで信頼を取り戻す」と返答するのがやっと。討論後、この高校生は「揚げ足を取る感じになって申し訳なかった」と山尾氏を気遣う“大人の対応”を見せた。
東京都選挙管理委員会が作成した動画に至っては、制服姿のキャラが「モテたい!」と願いながら投票するなど意味不明の場面が続く。
※週刊ポスト2016年7月8日号