ライフ

ひざの痛み 重症になると「人工関節」を埋め込む手段も

ひざの痛みはどう治す?

 加齢による「変形性膝関節症」、いわゆるひざ痛の患者は予備群含めて約3000万人と推計されている。

 ひざに痛みを感じると、多くの人がまず頼るのは湿布や塗り薬といった処置だろう。しかし、それらは対処療法に過ぎないうえ、自分でマッサージをするのも注意が必要だ。自己流でひざを揉むと、ひざ周辺の筋肉がこわばって血流が悪くなり痛みが治まりにくくなることがある。

 自分でできる対処法には限界があることも知っておくべきだ。最初は「軽い痛み」でも、5年から10年かけて気づかぬうちに重症化する可能性があるのが変形性膝関節症の恐ろしさである。関町病院の丸山公・院長の話。

「朝起きぬけに膝が痛んだり、動かす時に音がしたりするのが初期症状。放置すると膝が変形してO脚が進んで行きます。軟骨がほぼ磨り切れて骨がぶつかる重度の状態で駆け込んでくる患者も多い」

 初期の変形性膝関節症と診断されると、鎮痛薬やヒアルロン酸の関節内注射など薬物療法や、痛む場所にサポーターを付けて歩いて筋力を強化する運動療法が主な治療になる。

 それでも回復しない患者にはMRI検査をしてひざの痛みの原因箇所を探る。

「痛みの部位が半月板なのか軟骨の欠損なのかを特定し、内視鏡手術を勧めます。炎症を起こしている半月板や滑膜を患者に負担をかけずに切除できます」(同前)

 欠損した軟骨に他の関節の軟骨を移植する手術もある。こうした手術は入院期間も日帰りから1週間と短く、自己負担額は保険適用で8万~10万円ほどだ。

 ひざの変形が進行した重度の症状となると「人工関節」を埋め込む手段が用いられる。痛みの原因となるひざ関節そのものを取り換えるので、歩行困難な患者も歩くことができるようになる。

 入院期間は3週間前後と長く、自己負担額は50万~60万円ほど。人工関節が破損した場合、再手術が必要となるなど体への負担も大きいのがデメリットだ。

 いずれにしても、自分で対処せずに早めに医療機関で診てもらうほうが賢明だ。ひざ痛は放っておいても治らないだけでなく、別の病気が潜んでいる可能性もあるからだ。順天堂大学医学部の黒澤尚・特任教授が警鐘を鳴らす。

「膝上の骨の一部が何らかの原因で壊死する『大骨内顆骨壊死』や女性に多い『関節リウマチ』、発作的な関節炎が起きる『偽痛風』などが、症状が似て紛らわしい疾患です。レントゲンやMRIですぐに診断できるので、早めに整形外科などを受診してほしい」

 重度の症状になったときには生活そのものが崩壊しかねない。不安があれば、すぐ行動に移したい。

※週刊ポスト2016年7月8日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン