角居厩舎はおかげさまでいまは管理馬が多くなり、一度地方に出た馬を再び戻すということが、難しくなりましたが、開業当初はいろいろやりくりしました。
2003年3月にデビューしたアキノロマンスという牝馬は新馬戦が6着、4着で、未勝利戦が2着と3着が1回ずつ、4着3回、5着1回という惜しい競馬が続いたものの、9戦して勝てなかった。500万条件に格上挑戦させましたが、健闘したものの5着。
そこで、園田に移籍させて翌年4月、岩田康誠騎手の手綱で待望の勝利を挙げ、同じ鞍上で連勝、出戻りを果たします。岩田騎手がデルタブルースで菊花賞を勝ってくれたのはこの半年後です。
アキノロマンスは中央に戻ってからは500万下で2007年2月まで走り続け、中央で2勝。無事に競走生活を終えました。こういう成長の仕方もあるのです。現在は繁殖牝馬となり、産駒のアキノバレリーナ(田中剛舎)が6月の未勝利戦を勝ったようです。
●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。中尾謙太郎厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て2000年に調教師免許取得。2001年に開業、以後15年で中央GI勝利数23は歴代2位、現役では1位(2016年7月3日終了時点)。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、馬文化普及、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカ、エピファネイア、ラキシス、サンビスタなど。
※週刊ポスト2016年7月22・29日号