芸能

最期までラジオを愛した永六輔さん その理由とは?

永六輔さんがラジオにこだわった理由とは?

 放送作家でコラムニストの山田美保子氏が独自の視点で最新芸能ニュースを深掘りする連載「芸能耳年増」。今回は、訃報が伝えられた永六輔さんの“ラジオ愛”を振り返る。

 * * *
 この一週間は、7月7日に亡くなった永六輔さん(享年83)について長尺で伝える番組がとても多かった。

『上を向いて歩こう』や『いい湯だな』『こんにちは赤ちゃん』など大ヒット曲の作詞家として、『夢であいましょう』(NHK)の放送作家や出演者として、大ベストセラー『大往生』執筆者として、そして46年も放送されていた『永六輔 誰かとどこかで』(TBSラジオ)のパーソナリティーとして…、「マルチに活躍していた」永さんのプロフィールがさまざま紹介されていた。

「マルチに」というのは間違ってはいないが、永さんにとっては好きな言われ方ではなかったのではないか。晩年、永六輔さんがこよなく愛し、自分の居場所としていたのはラジオだけだったからだ。

 テレビについては「テレビは自分を何倍にも大きく見せ、真実でないものが、あたかも真実のように映ってしまう」とおっしゃり、あるときから親友の黒柳徹子さんの『徹子の部屋』(テレビ朝日系)以外、全く出演しなくなってしまった。というか、テレビに背を向けていた…が正しいかもしれない。

 それでも、たとえばTBSの現在の社屋が完成した際など、同局を支えた大物ゲストとして、どうしても永さんが出演しなければならない場面が何度かあった。でも「怒って帰ってしまわれた」とスタッフが大慌てしていたことが私の知る限り、2回ある。

 でも、ラジオには最期までこだわって出演していらした。いまから10年以上前になるが、『婦人公論』で糸井重里さんがホストをつとめていらした鼎談連載「井戸端会議」で、その糸井さんと永さん、私でおしゃべりをさせていただいた。

 テーマは「ラジオ」。それがのちに糸井重里さんの『続々と経験を盗め』(中央公論新社刊)という単行本に収録された。

 実は私はラジオ出身だ。新卒でTBSラジオの「954キャスタードライバー」という仕事に就いた。アンテナがついているラジオカーを運転しながら各地をレポートして回ったり、毒蝮三太夫さんや吉川美代子アナウンサー(当時)を載せて中継のお手伝いなどをしたりしていた。

 その関係で20代の頃から永さんには御世話になっていて、その後、放送作家やコラムニストとして活動をするようになってからも、永さんがパーソナリティーをつとめるラジオ番組にゲストとして呼んでいただいた。そんな御縁で鼎談メンバーに加えていただいたのだ。

 このとき永さんは「山田さんはラジオの第三期生と言っていいのかな」とおっしゃった。ラジオ、テレビ、インターネットの三つを押さえている世代という意味で、対する永さんは、携帯電話も持たないし、インターネットもやっていないし、ファクシミリも送れない…と言っておられた。

 永さんの番組は、最後の最後までハガキ投稿にこだわっていた。それもハガキの値段が7円だった時代からやっているので、リスナーからのハガキを紹介するときにはコーナータイトルに「7円の…」と入れていたほどだ。

 ちなみに永さんは、曰く「第二期生」。中学2年生のとき、NHKラジオの『日曜娯楽版』にコントを投稿し始めたのがきっかけとなり、晩年までラジオと繋がっていらした。

 実は放送作家の後輩たちには、学生時代のラジオ投稿がきっかけとなっている人が多い。代表的なのは秋元康さん。そして実は私も小学校時代、土居まさるさんの『セイ!ヤング』に投稿していたことが大きなきっかけとなっている。

 件の鼎談で永さんは、ラジオパーソナリティーについて、こんなことも言っておられた。

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト