実は、この7人の囚人の中に革命家だの政治犯だのは一人もいない。有価証券偽造者が4人、精神異常者が2人、放蕩息子が1人。以上7人であった(中公新書『物語フランス革命』)。精神異常者を刑務所に収監するのは別の意味で問題になろうし、放蕩息子を収監するのは現代では意味が分からない。当時はこれらの人たちは「禁治産者(現在の成年被後見人にほぼ相当)」として、社会から隔離されていた。
現代日本でも成年被後見人は2013年まで選挙権はなかった。だから、バスティーユ監獄襲撃・囚人解放は、3人に関しては成年被後見人解放運動だったと言えなくはないけれど、政治犯解放運動だったわけでは全然ない。バスティーユ襲撃に立ち上がった民衆は、見当違いの方向に立ち上がっていたのである。
フランス革命を理解するには、その内実をまず知らなければならない。内実は内視鏡を使わなくても、研究書を何冊か読めば分かることなんだけど。
●くれ・ともふさ/1946年生まれ。日本マンガ学会前会長。著書に『バカにつける薬』『つぎはぎ仏教入門』など多数。
※週刊ポスト2016年8月5日号