国内

バスティーユ監獄 収監されていたのは詐欺師や放蕩息子

評論家・呉智英氏

 7月14日は内視鏡の日。新聞記事でそれを目にした評論家の呉智英氏は、その理由がダジャレであると知って絶句する。それでは国際的な記念日になりえない。7月14日はフランスの革命記念日だからだ。革命記念日の由来であるバスティーユ監獄襲撃について、内視鏡ではなく研究書から分かる内実を呉氏が解説する。

 * * *
 7月14日の朝、紅茶にマドレーヌをひたして口にし、朝刊に目をやると、子供の頃の懐しい記憶がよみがえってきた。昆布飴をなめながらアヒル小屋の方で駄洒落を言い合っていた思い出である。

 紙面には精密光学機器メーカー、オリンパスの広告が出ていた。「今日は内視鏡の日」。確かにオリンパスは内視鏡も作っているけど、今日はその発明記念日なのか。と思ったら、そうではなかった。「7.14(ないし)」なんだって。日本の光学技術は世界に通用するが、この駄洒落技術は通用しないだろう。それどころか、7月14日を内視鏡の日とするセンスも世界では通用しないだろう。この日はフランス革命記念日だからである。

 フランスでは「国民祭日」と言う。英語では「バスティーユの日」と言う。バスティーユ監獄襲撃で革命が始まった日だからである。そして翌日のニュース(フランスでは14日夜)では、大型トラック暴走テロが報じられた。この日をねらった凶行らしい。

 バスティーユの日を内視鏡の日としてしまうぐらいだから、日本でバスティーユ監獄襲撃の実体が知られていないのも当然だろう。政治学者の丸山真男は、何かの本にベルサイユ監獄襲撃と誤って出ていたと怒っていた。だいたい、ユしか合っていないし。

 私も高校時代の世界史の授業では年号を暗記させられたことぐらいしか憶えていない。教科書には図版として監獄襲撃を描いた当時の銅版画が載っていた。圧政に怒った民衆が収監されている政治犯たちの解放を求めて監獄を襲撃しているように見えた。それが全然ちがうことを後に知った。

 最近の教科書類では少し変わってきた。山川出版社の『詳説世界史研究』には「囚人7人を解放した程度」と記述されている。たいした意義はなかったことが感じ取れるが「囚人」の内容については書かれていない。自由と平等を訴えて政治犯となった革命家たち、と読む生徒も出てくるだろう。

関連キーワード

トピックス

(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
《クーラーの温度設定で意見が真っ二つ》電車内で「寒暖差で体調崩すので弱冷房車」派がいる一方で、”送風口下の取り合い”を続ける汗かき男性は「なぜ”強冷房車”がないのか」と求める
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト