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国のために死ねる自衛隊員の人生観とは

 訓練のあとの飲み会にも混ぜてもらった。講義や実技のときは、自然体とはいえ、みんな相当集中していたらしい。飲み会になると、一気に場がゆるむ。それぞれの個性がぐんぐん出てきて、互いに世間一般からズレている人格をいじり合う。

 性格的にはいい兄ちゃんばかり(姉ちゃんがいる日もあった)。「どうして自衛隊に入ったの?」という私の質問に、「決まってますよ。(自分の頭を指して)ぱぁ~ですから」(一同爆笑)みたいな返答をくれる。「いや、オバタさんは上流階級の出かも知れませんが、うちは貧乏でしたから自衛隊なのであります」と、どこまで本気か分からない説明をする人もいる。

 国家のためとか、国民を守るためとか、そういう立派なことを言う人はいない。ただ、なにかの役に立ちたい、というようなことは、酒が進むと真顔で口にする。根がすごく真面目なのだ。

 ところが、自衛隊の中では、それが実感できない。戦わないことを前提とした自衛隊でやる軍事訓練の大半はしょせんゴッコだ。もし、いざその時となったら、自分がそこで役立てる気がしない。だから、ここで訓練を受けている──みんなそう言っていた。

 同じ国の同じ現在に、こんな生き方をしている人たちが実在していることはもっと知られていい。彼らは、一本筋の通ったリアルを求めており、そのリアルがたまたま軍事というジャンルであったにすぎない。

 安保法制云々で、自衛官が戦場に向かう機会は増えていく。実は、伊藤私塾で知り合ったうちの誰かが、遠くない将来、戦死する確率も低くない。

 何のために彼らは死ぬのか。彼らは例えば北朝鮮の拉致被害者を救出するため、命を賭すわけじゃない。国や国民が要望しているからではなく、政治家の都合で世界のどこかの戦争、紛争地域に行かされ、その意義もよくわからぬまま死に近づく。

 彼らが戦死したら、大騒ぎになるだろう。が、自らの意志で自衛隊に入ったのだから仕方ないのでは、と冷めて見る日本人も少なくないのではと思う。我々の日常と軍事の世界はあまりに隔絶しているから。

 国防について、イデオロギーをいったん横におき、まずは前線に立たされる自衛隊員たちの実情を理解していく責務が、我々一般人にだってある。他人事ではない、同時代に生きる真面目な若者たちの切実な話なのだ。

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