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国のために死ねる自衛隊員の人生観とは

自衛官はなんために死ぬのか(写真:アフロ)

 あなたは国のために死ねるか。話題の新書の著者について、コラムニストのオバタカズユキ氏が語る。

 * * *
 都知事選や大量殺人などの騒ぎにおされて、誰も気に留めていなかったが、7月の最終週には北朝鮮の拉致問題関連ニュースが2本流れた。

 1本は、拉致事件に関与した疑いで国際手配されている元工作員、シン・グァンスが、朝鮮中央テレビに映っていた件だ。日本の警察は2006年から身柄引き渡しを求めているのだが、北朝鮮は未だに彼を英雄扱いしている。

 もう1本は、日本の岸田外務大臣が東南アジア諸国連合のラオス会議で、北朝鮮に対し「すべての拉致被害者の帰国を含む一日も早い拉致問題の解決を求める」と述べた件。それがどの程度の実効的意味を持つのかは分からないが、拉致被害者家族が高齢でいつ亡くなってもおかしくないことを考えると、ずっと外交的努力を続けるだけでいいのかよ、という思いにもなる。

 日本は平和国家。ゆえに、幾ら効き目がなさそうでも、飽くまで外交的努力でこの難題を解決していく。というコンセンサスが揺るがないなら、自分が拉致被害者家族であれば我慢できないと思う。なぜ実力行使で取り返してくれないのか、自分たちは見捨てられているんじゃないか、と。

 しかし、戦後の日本はずっと打つ手なしで、乱暴者の北朝鮮にやられっぱなしかというと、そんなこともないのだ。武力を用いて、拉致船と戦った過去がある。

 1999年の能登半島沖不審船事件がそれだ。拉致した日本人を乗せて航行中と思われる不審船を、海上自衛隊のイージス艦「みょうこう」が猛追、不審船のわずか200~50メートル前や後や横に何発もの炸裂砲弾を発射した。

 その破壊力に参ったか、不審船は真っ暗な日本海のど真ん中に停船。「みょうこう」の若い自衛隊員たちが、まさに死を覚悟し、不審船内に立入検査のため乗りこもうとした。その刹那、不審船は再び逃走。結果的には取り逃がしたのだが、そんな大事件があったことをほとんどの日本人は知らない。

 かく言う私も昨年の2月に、その事件について触れた毎日新聞の記事を読むまで、まったく知らなかった。この国が国民を守るためそんな無茶をしていたなんて、驚いた。

 7月20日に刊行された一冊の新書。『国のために死ねるか』の著者は、海上自衛隊の「特殊部隊」である特別警備隊の創設に携わった伊藤祐靖だ。上記の毎日新聞記事で紹介されていた元自衛官で、いまは警備会社のアドバイザーなどを務めている。そして伊藤は、東京で私塾を開き、現役自衛官らに、自分が身につけた知識、技術、経験を伝えている。

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