簡単な例を挙げると、今はクレジットカードを使うと3~4%の手数料を取られる。これは、まずクレジットカード利用者の中に支払い不能になる人がいるため、その回収コストや不良債権になった時のコストが発生するからだ。さらに、店舗の端末からNTTデータのCAFISなどのカード決済サービスと全銀システム(全国銀行データ通信システム)を経由した個人口座へのアクセスにも高い手数料が必要になる。
しかし、ブロックチェーンでトランザクションの証明ができて複製や偽造が不可能な仮想通貨なら、CAFISや全銀システムのようなものを通る必要がなく、スマートフォン(スマホ)やPCからのわずかなパケット料金だけで済むので、決済コストが著しく安くなる上、第三者ではなく個人個人が自分で自分の信用を証明できる。
私が考えるフィンテックの「四つの原理」は次の通りだ。
(1)価値があるものは何でも貨幣と置き換えて考えられる。
(2)価値は時間の関数である。
(3)スマホセントリックのエコシステム(スマホ中心の生態系)を使えば、ほぼ瞬時に全世界のどことでも誰とでも取引することができる。
(4)以上三つの原理を実行するために必要な“信用”を(サイバー空間で)提供するものが、国家や金融機関に取って代わる。
要するに、ユビキタス社会では国家や金融機関に頼ることなく「本人が信用を持ち歩けるようになる」わけで、これは画期的なことである。
※週刊ポスト2016年8月12日号