下流部でアユの遡上数を毎年調べている東京都島しょ農林水産総合センターの推計によると、調査を開始した1983年にわずか18万匹だった推定遡上数は、2010年に186万匹、2011年に783万匹と順調に増加。2012年には調査開始以来最高の1194万匹を記録した。その年をピークに遡上数は減っているとはいえ、2016年も463万匹の水準を保っている。山崎さんが期待を込めて語る。
「次の一歩は、多くの人に多摩川の天然のアユを食べてもらうことです。おいしいと知れば、川をきれいにしようという意識が高まり、水もより美しくなるでしょう。心配なのは、多摩川の水の量が昔より少なく、大きくなった成魚が水量の足りない魚道を下りてこられないことです。落ちアユが増えないと産卵数も増えません」
遡上したアユを産卵できる下流まで下らせる仕組みづくりも、今後の課題という。江戸前アユの完全復活まで、地道な取り組みは続く。
撮影■津留崎健(つり人社刊『Tamagawa 東京ネイチャー』著者)
※週刊ポスト2016年8月12日号