ライフ

多摩川の中流域で江戸前アユ豊漁 竿釣りで1日100匹も

多摩川上流部にはアユの「友釣り」を楽しむ釣り人も多い

 夏の夕暮れ時、東京都心から電車で約20分の住宅街を流れる川の水面から、無数のアユが元気に飛び跳ねる。山梨県・笠取山を源流とし、東京都と神奈川県を流下して東京湾に注ぐ全長138キロの多摩川の中流域。東京湾で育ち、生まれ故郷の多摩川に遡上する「江戸前アユ」が今夏も母川へ戻ってきた。

「現在、この辺りのアユは『一跳ね千匹』といって、1匹が水面から飛び跳ねると、その水面下には1000匹いると言われます。川がきれいになり、アユの数はかなり増えました。味もこの5~6年で格段によくなりましたよ」

 河口から約26キロ上流の二ヶ領上河原堰(調布市・川崎市)で多摩川を眺めながら、淡水魚研究家で川崎河川漁業協同組合理事の山崎充哲さん(57)が説明する。この付近でアユの投網漁も行なう山崎さんによれば、アユが跳ねている方向を目がけて網を投げて引くと、多い時には1回で約80匹、10キロほどのアユが獲れるという。一般の釣り人が竿釣りで1日100匹釣り上げることも珍しくないそうだ。

 江戸時代には将軍家にも献上されていた多摩川のアユ。だが、高度成長期の生活排水による水質悪化で70年代初頭に姿を消した過去がある。汚染された多摩川は、清流を好むアユに見捨てられた。その後、下水処理場の整備や汚水処理技術の進歩によって水質は徐々に改善し、アユが戻るようになるまでにきれいな川に甦った。

 多摩川のアユは、水温が16~18℃に下がる11月ごろから下流域で産卵。孵化した仔魚は海へ出てプランクトンを食べて育ち、水温が18℃になる春ごろに稚アユとなって川へ戻り、遡上を始める。夏の間は多摩川の豊富な水苔を食べて成熟し、秋に入ると産卵のために「落ちアユ」となって川を下り、一生を終える。ただ、多摩川では高い堰に阻まれて上流まで遡上できないアユが多く、遡上を助ける魚道を整備。さらに、東京都は中流の稚アユを上流までトラックで運んで放流する試みも行なっている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
舞台『シッダールタ』での草なぎ。東京・世田谷パブリックシアター(~2025年12月27日)、兵庫県立芸術文化センター(2026年1月10日~1月18日)にて上演(撮影・細野晋司)
《草なぎ剛のタフさとストイックさ》新幹線の車掌に始まり、悟りの境地にたどり着く舞台では立見席も
NEWSポストセブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
「異物混入」問題のその後は…(時事通信フォト)
《ネズミ混入騒動》「すき家」の現役クルーが打ち明ける新たな“防止策”…冷蔵庫内にも監視カメラを設置に「なんだか疑われているような」
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン