高畑裕太さんの名前が最初に知れ渡ったのは、2012年9月。『金スマ』(TBS系)に出演し、「高畑淳子の息子が将来俳優になるための修業として、便利屋でアルバイトをする」という企画で、あまりのダメダメぶりが話題になりました。そのイメージもあってか、「連ドラ初レギュラーで朝ドラ『まれ』出演」の大抜擢が決まったときは、「親の七光り」という批判が殺到していたことを思い出します。
さらに、『まれ』終了後には、元気で明るいキャラクターを生かしてバラエティー番組への出演が急増。ただ、常に前へ出ようとし、芸人のようにボケを狙い、女好きを公言するなどの振る舞いは、「制作サイドには好かれているけど、視聴者には好かれていない」という解離が生まれ、好感度は上がりませんでした。
昨年から今年にかけて高畑淳子さんが、『Dr.倫太郎』(日本テレビ系)、『表参道高校合唱部!』(TBS系)、『ナオミとカナコ』(フジテレビ系)、『真田丸』(NHK)と各局で好演を連発するほど、その裏で高畑裕太さんは、「母親は凄いけど息子は……」と評価を得られずにいたのです。
しかし、今期シリアスとコミカルの両役を演じ分ける姿は、まさに母の得意とするところ。「さすが高畑淳子の息子」という面が出はじめていますし、陰で努力しているのは間違いないでしょう。
昨年末、『最強スポーツ男子頂上決戦』(TBS系)で鍛え上げられた肉体で上位入賞したことからもそれがうかがえますし、徐々に「残念な二世」ではなく、たくましい一面を見せはじめているなど、好感度が少しずつ上がっています。同年代はイケメン俳優ばかりだけに、好感度さえキープできれば、多くのチャンスに恵まれるのではないでしょうか。
そんな高畑裕太さんに不安があるとしたら、バラエティー番組の出すぎ。「さまざまなイメージの役を演じる」俳優業をメインにするのなら、「視聴者に固定のイメージがつきやすい」バラエティータレントのような活動はマイナスになってしまいます。
実際、名優と呼ばれる人はバラエティー番組を避け、出演しても固定のイメージを持たれないよう、静かに振る舞う人がほとんど。まだ22歳だけにバラエティー番組に出るくらいなら、さまざまな演出家のもとで演技経験を積んで、母に負けない名優を目指してほしい気もします。
また、多くの二世俳優が、「親の名前が忘れられたころ、ようやく評価してもらえるようになった」と語っているだけに、「しばらくの間は母子共演しない」くらいのほうがいいのかもしれません。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。